#25

「あーーー、柔らかい。めいちゃん、いつもと同じで具合がいい」


 そう言葉を落とした紫月はすぐには動き出さない。感覚を馴染ませるように数秒動きを止め、私の腰を持ちゆらゆらと揺らしていく。緩やかな律動に吐息を吐く。


「ん、あ、あぁ」

「いつもよりナカうねっている。見られるの好きなんだね。……ね? 楽しいって言ったでしょ?」


 手首を締め上げられるように拘束され、ベッドに縫いつけられる。ふふ、ッと笑う紫月はサディスティックに私の腰に自らの腰を打ちつけていく。艶かしい音が寝室に転がる。私は無意識に紫月の腰に自らの足を絡めていた。密着する肌と肌。軋むベッド。甘やかに私を貫く剛直。


「舌出して」


 その言葉とともに私の口腔内に紫月の舌が侵入し、その舌先で外に誘い出された。外気に触れる舌は分泌液を垂らす。その分泌液を紫月に舐め取られてしまう。くちゅり、くちゃり、上も下も泥濘んでいて卑猥な音を響かせる。


「、しづ、き……あ! んひぃ、」


 猛りの先でこつん、子宮を潰される。容赦なく奥を擦られれば酸素を失っていく。


「俺も気を抜くとすぐ、持って……かれそ」


 愉しげに笑う紫月の瞳がぎらぎらと捕食者の色で輝く。隣に立つ桐野は一切言葉を発さなかった。肌のぶつかる音とナカがかき混ぜられる音が寝室に響き渡る。ぐちゅり、どちゅり、隘路を突き進む肉の塊は勢いを増していく。緩やかだった律動は次第に激しくなり、私の身体は隅々まで痺れを催す。びりびり、と指先までも快感が回り、今ならどこを触られても弾け飛んでしまいそうだ。


「だらしない顔、桐野くんに見せてあげたら?」

「……君、大概…ぁにしろよ」

「顔隠さない」


 私は紫月のその言葉に顔を逸らす。それが気に食わないのか紫月は強引に私の顎を掴み、顔を桐野の方へ向ける。桐野の艶やかな瞳が私の瞳と絡み合う。私を射抜くように見つめる桐野の双眸は色香を孕んでいた。私に欲情しているような瞳ではないが、それでも端正な顔付きに彩られたその視線はセクシーだった。煙草を咥えたままの桐野は私を視姦し、乳白色を吐き出す。

 紫月の律動の赴くまま私は嬌声を上げ、桐野を見つめる。手首を締め上げられたままの自由の利かない身体を跳ねさせ快楽を逃す。だが、遠慮のない紫月の腰の打ちつけに快楽が徐々に蓄積されていく。視線の先に桐野がいるのに視点が定まらない。リズミカルに私のナカを愉しむ紫月のペニス。律動が緩み、一呼吸ついたときだ。くるん、体勢を変えられ四つん這いの格好にさせられる。腰を高く持ち上げられ、浅い場所から奥深くと一気に打ちつけられる。


「ひぃ、あぁ! ……っ、あ゛」

「……めいちゃん可愛い」


 私はその刺激で上半身をベッドに沈める。腰を撫ぜられながら一心不乱に紫月の熱が埋められ、私は酩酊状態だった。淫らな声を漏らすだけ。背中から覆い被さってくる紫月は私の肩に歯を立てる。


「ん! んぁ、は…!」

「桐野くんはめいちゃんのいい場所知っているのかな?」

「…、くっ、は」

「桐野くんの名前出すたびに、ナカきゅんきゅんしてる。妬けるな」


 その言葉どおり桐野に妬いているのか紫月は容赦なくナカを突き進んで蹂躙する。突き上げられるたびに蜜があふれ、膣が収縮するのが自分でもわかってしまうから厄介だった。


「俺もいつもより、……余裕がないんだ。めいちゃんのことめちゃくちゃにしたい」

「…、あ! あぁ!」

「ほら腰上げて。いやらしく腰振っているの桐野くんに見てもらお」


 そろそろなのか紫月の動きもより激しくなっていく。水音が淫らに響き、私はきゅぅぅ、ッとシーツを握り締めた。乱暴に私の腰を持つ紫月はうわ言のように「出る、…で、る」と言いながら熱を奥へと押し込んでいく。  

 

「あ! あぁぁ──…!」

「くっ……、」


 びゅくり。紫月が欲を出すのと私が達するのは同時だった。私はベッドに突っ伏す。

 ぱき、フローリングが音を立てた。どうにか力を振り絞りその音がした方向に目線を向ける。そこにはベッドに近付いてきた桐野がいた。煙草を唇から離し、指先に持つ桐野はその煙草を私に差し出してくる。私が唇を突き出せば、するり、煙草を咥えさせられる。桐野は私に煙草を与え、寝室から出ていった。

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