#24

 分厚い舌で舐められ、しなやかな指先でなぞられた最奥はしとどに濡れ、こぽり、音を立てながら蜜があふれ出てシーツを汚す。微細に震える私をくつくつ、と愉快そうに喉で笑う紫月は指先を止めることなくナカを柔らかくしていく。挿入された指が動きながら、さらにその上にある突起を親指でかり、ッと押し潰され嬲られる。一度達した肉体はすぐにでも快楽の階段を駆け上っていくようなそんな淫靡さを兼ね備えていた。私の体はガクガクと痙攣する。紫月は言葉どおり私のいい場所を知り、私を掌握していた。


「ん、ぁひぃ! あ、も…や! いやぁ……ぁ」

「いいの間違いだよ。ほら、気持ちいーって言いなよ」

「…し、づき! あんぁ、ふぁ…、」


 泥濘んだ狭い道を這う紫月の指先。利き手ではない空いてる指先が緩慢に腹の上を通り、胸の先端をきゅっ、ッと摘む。その瞬間、弓なりにしなる私の身体。ふぅ、ふぅ、と荒い息遣いの私とは正反対に紫月は余裕の面構えだ。


「ね、……俺、桐野って人に会いたい」

「は、? ……ひぃあ」


 紫月が唐突に変なことを言うから私は瞠目する。だが、話の最中でさえも私に快感を与えようとする紫月の指先は律動をやめない。壁上をぐ、ッと押しながらたまに擦り、手慣れたようにナカを蹂躙する。


「呼んで」

「……なにいっ、て」

「あ、今きゅぅッと締まった。見られるの想像した? エッチだね」


 ふふ、っと意地悪く笑う紫月は蠢くナカから指を引き抜いた。私の目の前で蜜が絡んだてらてらと光る指を舐めあげる。淫靡で劣情を誘うその舐め方に子宮がきゅぅッと熟した。


「桐野を呼ばないなら俺帰る」

「君はなにを、言っているのか、わかって…。私にそういう趣味はない」

「別に俺もないよ。ないけど、楽しそうじゃない?」

「……」


 私は愉快そうに微笑む紫月を睥睨する。だが、それは彼を煽る材料にしかならず、紫月は自らの顔をより破顔させた。滾る欲望を今にも爆発させそうな獣と視線が絡み合う。妖艶な紫月の瞳は私に思考を捨てさせる。


「ね、めいちゃん? 俺が欲しいなら彼を呼んでよ」

「……イヤ」

「なぜ?」

「なぜって…」

「もしかして彼のこと愛しているの?」


 的外れにもほどがあるそれに私は高らかに笑う。はははは。桐野は私の犬で、私は獣姦の趣味はないってだけだ。ペットの前で性行為はしないだろ? そう思いながらも私は倒錯した行為に傾き始めていた。はやく、と物欲しげにパクパクと口を開く割れ目。駄目押しとばかりに紫月は恥骨の場所にある爛熟した突起を擦った。


「、ひ、……わか、った!」


 私は一息ついてから紫月を睨む。


「桐野!!」


 私はベッドに沈みながら声を上げた。数秒してひたひた、とリビングの方から足音が聞こえてくる。鷹揚に向かってくるその足取りは寝室の扉の前で止まる。ノックがされ、寝室の扉が開いた。


「なにか? めいさん」

「……めいちゃんが見ていてほしいって」


 私は私の上に馬乗りになってそう白々しく言葉を落とした紫月を睥睨した。まるで私が発案者みたいなその言い方に苛立ちを露わにした。紫月が桐野に会いたいって言ったのに。私は眉根を顰めキツくキツく紫月を睨む。だが、紫月は妖しく笑って自らのジーンズのフロントボタンを外すだけだ。ボクサーパンツを素早くずり下ろし、太腿に引っ掛けた。自らの恥骨と私の恥骨を合わせる。反り返り血管の浮き出た紫月のモノが私の腹に乗せられた。


「挿れるまえにいつも思う。全部入るのかな〜って。でもめいちゃん優秀だから全部入っちゃうんだよね〜。子宮潰されるの好きだよね」

「……、んっ、」

「桐野くんがいるから恥ずかしい? 声我慢しているの健気で可愛いね」


 紫月は悪魔のように愉快そうに笑っている。視界の端に桐野が壁にもたれかかるのが見えた。かちん、ライターの音がして煙草の火が灯された。桐野が煙草を咥えながら淡々とした表情でこちらを見つめている。紫煙が舞い踊る。その乳白色を見つめていたときだ。ぐん、ッと私の中に埋められた熱。奥深くまで穿たれるそれに思わず息を止めてしまう。快楽に顎を天に向けた。そのとき桐野と目線が絡まる。

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