第8話、派遣(仮)Yさん 黄色の泉
株式会社サンキュー運輸の派遣の先輩である、Yさんが日に日におかしくなっていった。
ある日、出社すると、Yさんがいつものように叫んでいた。
Yさんが不満で喚き散らす行為は、私が派遣として来て、わりとすぐに発覚した。
Yさんが会話に入っていないと、Yさんはワーワー喚き出す。自分の名前を連呼して、無理矢理他人の会話に入ってくる。
ああいう社会人はあまり見たことがない。最初はキチガイだと思った。
この日のYさんの異変は、事務所の自分の椅子の上で正座をしていた。朝は、普通に椅子に腰かけていたのに、気がついたら椅子の上で正座である。
そして、Yさんの腰の辺りから下に向かって、黄色い波のようなものが溢れ出ていた。Yさんは椅子の上で正座をしながら、上半身は前傾姿勢をしていた。まるで、その場で三つ指をついて、お辞儀をしているように見えた。
その姿勢のまま、痛みを訴えながらも、しばらく同じ姿勢を保ち続けていた。
事務所にいた正社員が、
「痛いんだったら、普通に座ればいいでしょ」
と慣れた口調でツッコんでいた。
この社員が、
「Yさんは何を考えているのか分からない」
といっていたことがあるが、よく冷静にツッコんでいられるなと思った。
あの黄色い波は、実際には下へ注いでいたわけではなさそうである。床は濡れていなかった。
アレは何だったのだろうか、そういうことがこの会社では多かった。
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