第7話、現場員 事故現場の様子

 株式会社サンキュー運輸の月刊広報誌が社内で配られたので、派遣社員ながら、暇なので読んでいた。

 この会社は全国の港町の物流で有名なH会社の子会社であったので、各港での仕事が主流であり、国内や海外の品物の運搬を行っていた。

 広報誌には悲しいかな、今月の死亡事故や怪我の情報などが記載されていた。

 広報誌を見ながら、事務所の正社員と話をしたことがある。

 「けっこう事故が多いんですね」

 「いやね~、これでも事故は減った方だよ」

 そんなもんなんだと思って、広報誌を読み続けていくと、ある不可解な記載があった。

 大型船の事故現場の記載である。現場に現場員が複数いたがそのうちの一人が船底に落ちて怪我をしたとあった。

 その落ちた現場員がいうには「船底に黒いモヤモヤが見えて、何だろうと思って見ていたら落ちてしまった」とあった。

 その記事を見て、正社員がいった。

 「黒いモヤモヤって何だろうね? ……怖いね…」

 現場員の言葉がおかしいとか、こんなのあるわけないじゃんとか笑い飛ばさないのな…。

 こういう不可解な発言でも、ちゃんと聞いて記事にしているんだと、当時、感心していた。


 

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