第2話、事務(仮)Oさん 空中往復ビンタ

 株式会社サンキュー運輸に派遣が決まり、数日経った。

 事務の(仮)Oさんという方がいた。中性的な顔立ちであり、当時有名だったイケメン韓国人俳優の一人に似ていた。

 何故なのかは知らないが、課長のKさんと折が合わない。二人の間にはいつも微妙な空気が流れていた。


 ある日のことである。

 Oさんが事務所内でうろうろしていた。

 最近のOさんは目が赤い。

 「いったい、いったい」

 というOさんの声がするので、見ていると、Oさんが頰を手で押さえていた。

 そこにはOさんしかいなかったが、まるで空中から見えない手が出て、往復ビンタを受けているように見えた。

 「ああ、もう、いったーい。…まただよ」

 ……。うん、痛そうだな。Oさん、往復ビンタを食らってるじゃん。

 

 翌日から、あの往復ビンタはなくなっていたようだった。私が退社するまで、あの後、Oさんはあの攻撃は受けていないように見えた。

 アレは一体何だったのだろうか…?

 そういう行動をよく見た会社だった。

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