第3話 盗賊の拠点?ファスト調査とスモールスケール作戦で潰す

イシュラート領、ラル村。


マコトの導入した「記録制度」により、少しずつ村の全貌が“数字”で見えてきた。




 




畑の生産性。


木材の伐採量。


労働時間の推移。


そして――盗賊被害の発生地点。




 




「……やはり、北の森に集中してるな」




マコトは村の子供たちが描いた“被害マップ”を前に、指で地点をなぞった。


北の森。湿地帯を抜けた先に、古い炭焼き小屋があった場所だ。




「ここが盗賊の拠点だと仮定して、次に必要なのは“確度”だな」




 




村長ハルベルトが首をかしげる。


「確度、とは?」




「推測じゃなく、確認です。――『仮説検証』ってやつですよ」




マコトはにやりと笑う。


前世で何百もの企業再建を手がけてきた男にとって、“不確実性”は敵ではない。


むしろ、それを潰していく過程こそ、仕事の醍醐味だった。




 




◆ ◆ ◆




 




三日後。


夜の森に、五人の小隊が潜んでいた。




マコト、リーネ、村の若者三名。


全員、粗末な革鎧と木製の盾を身につけている。




「これが、マコトの言う“ファスト調査”ってやつか?」




「そう。大規模な軍を動かす前に、最小リスクで“事実”を取る。


 成功しても失敗しても、データさえ得られれば次に繋がる」




「……やっぱり、あんたの考え方、変わってるな」




リーネは弓を握りながら、苦笑した。


マコトは木の幹に貼りつくようにして、月明かりを避ける。




すると――森の奥、微かな光が見えた。




(焚き火。……やはり、いたか)




 




音を立てぬよう近づくと、粗末な小屋の周囲に、5人ほどの盗賊が見える。


見張りは甘い。しかも、武器もバラバラ。統率の取れた集団ではない。




マコトはすぐに撤退の合図を出した。


目的は殲滅ではなく“情報の取得”。十分だ。




 




◆ ◆ ◆




 




翌朝。


マコトは村長の家で、作戦図を広げていた。




「敵は10~15名。武装は軽装。食料は近隣から略奪して補っている。


 つまり――補給線がない。そこを突きます」




「補給線……?」




「彼らの拠点は、燃料と食料で維持されています。


 両方を断てば、3日で自滅します」




リーネが目を丸くした。




「まさか、戦わずに追い出す気?」




「その通り。コストゼロの勝利が、最も“利益率”が高い」




 




マコトの提案はこうだ。




森の南側の小道に偽の獣除け薬(実際は強烈な悪臭)を散布

盗賊の食料供給元を突き止め、夜間に“買い占め”て遮断

小屋近くの川を封鎖し、飲み水を遮る





それだけ。


剣を振るう必要は、一切ない。




 




結果――三日後。


盗賊たちは、飢えと喉の渇き、悪臭に耐え切れず拠点を放棄。


その隙に、マコトの部下たちが突入して制圧。


死傷者ゼロの完全勝利だった。




 




村人たちは歓声を上げ、マコトを「英雄様」と呼び始めた。




だが、本人は涼しい顔をして言う。




「戦略の基本は、“勝つこと”じゃない。“負けない仕組み”を作ることです」




リーネは笑った。


「ほんと、あんた……この世界の人間じゃないみたい」




「いや、異世界の人間なんでね」




マコトは冗談めかして答えたが、


心の奥では、確信していた。




(これでフェーズ1は完了だ。次は、商業インフラの再構築――フェーズ2に移る)




 




――コンサルタントは、戦場をも“プロジェクト”として管理する。

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