エピローグ


 数ヶ月が経った。

 無事にゲームをクリアした私は、そのカセットを手に、初出勤を果たした。

 その胸には、2つのペンダント。1つは、母にプレゼントした、クローバー。

 もう1つは、あの日砕けた鏡の欠片。これもまた、クローバーだった。

 少し違うのは、こちらは素人細工の拙い加工が目立ってしまうことだろうか。

 まぁ、普段はシャツの下にしまうのだから、見た目はあまり気にしすぎても無駄だろう。

 引越しを済ませた私の、元の部屋……あのアパートの部屋には、すぐに人が入った。この春から高校生の女の子が、一人暮らしをするのだとか。

 叔母にお別れの挨拶をしに行った時に、その見た目に驚いたが、おそらく二度と会うことは、ない……と、思うので、詳しくは語らない。

 とにかく今は、次の1歩を、踏み外さないように慎重に進むこと。それだけだ。

 ぴしゃりとほおを叩き、ほんのり顔に赤みが差す。

 そして、笑顔を作る。

 いってきます。

 誰に言うでもないその言葉に、応える声が、どこかから聞こえてきた。

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拝啓、鏡写しの私へ 海海刻鈴音 @mesolem

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