熊太先生の綴る言葉は流れるようで、キャラクターの人生を凝縮し、それを背景に落とし込むかのようです。『キャラクターの心が軋む音』が文字から伝わるその過程が、まるで風景のように流れる文字運び。詩的にして現代アートのようで、間違いなくそれは過去を垣間見せる。とても良い作品かと思います。
僕は騙された。ぜんぜん平易でもコマーシャルでもなんでもない、実に味わい深い人間ドラマのワンシーンだった。線路のポイントがガチャリと替わる、みたいな切り取り。ト書きではない。対話とモノローグの二層のレイヤーを行き来するだけで流れるように状況が明かされるという、この心地よさ。「小説を読んでる」という気にさせてくれる良作である。読後感も、たぶん多くの人が「良し」と感じることだろう。少なくとも、僕はそう感じた。
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