亡き人を偲ぶ、静かな回顧の物語
- ★★★ Excellent!!!
亡き親友とのやり取りを回顧する男の話です。
親友のことを妻を愛していた男だとどこか揶揄するように語るものの、そこには相手への信頼や絆が見えます。だからその主人公に自分が亡き後の妻を託そうとすることもまた、親友なりの信頼を表しているのだと思いました。
けれど最後まで読むとその印象は少し変わります。
双方向の深い信頼というよりは、主人公側の方が相手への信頼や尊敬が大きかったのではないかと。親友にとって妻を託すことは確かに信頼の証だったかもしれないものの、だからと言って彼にとっては主人公は無二ではない。妻がいなくなればどうにかなってしまいそうですが、主人公がいなくなってもしばし落ち込むだけで、その後はまた誰かと似たような関係を築けそうだと感じました。
とはいえ親友は一度も出てきていないので、本当のところは分からないのですが……。
そこまで考えると、主人公に妻を託そうとするのは信頼の証ではなく我儘の押し付けのようにも思えてきます。
本当に結婚してしまえば主人公は彼女を幸せにするために人生を捧げなければならないですし、それによって犠牲にしなければならないものも出てくるでしょう。そして、主人公も親友の身勝手さには気付いています。そこに対して憎しみを感じているのに、それでもなお主人公にとっては親友との日々は大切な思い出。
恋愛感情は勿論ないですが、どうにも片思いの相手に振り回されているような、そしてそのことすらも心地良く思っているような、そんな印象を受けます。
亡き人を偲ぶ、静かな回顧の物語です。