コウモリ傘はみていた

みぃ

時巡るコウモリ





はじめてキミに会ったのは雨そぼふる紫色けぶる街の中...

小刻みに震える指で身体にそぐわぬ大きな傘のえ頼りなさげに握ってた...

傘で顔ははっきり見えなくてもなぜだろうボクはとても気になった...

それから2、3日たってボクはまたキミに遭遇した...

キミだとわかったのは大きな傘の色...

小さく華奢なその姿に合わない真っ黒のコウモリ傘...

後にこのコウモリ傘の由来がわかるのだが違和感というよりなんだかキミの魅力引き立てるそんな風に感じてた...

キミに話しかけるチャンス待ち望んでた...キミと接触するチャンスはなかなか訪れず...

だけど狭い街の中幾度かボクはキミを見かけた...

はじめて雨の中見つけたキミは

雨空の下その可愛い顔にえくぼ

浮かべ笑ってた...

ちいさく右側にだけ出来るえくぼはキミを幼くみせる...




初めての雨の日から 幾度となくキミを見かけたけれど話しかけるきっかけは掴めなかった。

ただ その度に雨空の下で 右側のえくぼを浮かべて微笑むキミの姿が ボクの胸に焼き付いていった

ある日 街で突然の豪雨に見舞われ キミが慌てて大きな黒い傘を開いた その時 風にあおられて 傘が手のひらから滑り落ち 水たまりにぼちゃんと音を立てた キミは困ったように立ち尽くし濡れるのも構わず傘を拾おうとする


その時 ボクは無我夢中で駆け寄り 水たまりから傘を拾い上げた

「大丈夫?」

ようやく聞けたキミへの初めての言葉

キミは濡れた前髪を払い 顔を上げた。間近で見るその瞳は 雨のしずくを映して潤んでいた

「あ ありがとうございます。」

か細い声でキミが答えた時 ボクは気づいた。傘の柄には 色褪せた小さなキーホルダーが結ばれていた それはボクが幼い頃 亡くなった母からもらった 願い事を書いた小さな紙を折り込んだ

『こうもり』のキーホルダーと全く同じものだった。

「もしかして それ」

ボクが言いかけるとキミは静かに頷いた

「お母さんが昔くれた傘なんですそして…これは そのお母さんの忘れ形見 小さい頃 お父さんからもらったって。」


キミは俯き その声は雨音にかき消されそうだった。

その傘 そのキーホルダーは ボクが幼い頃に家を出た父が 再婚した女性の連れ子であるキミに ボクの母の形見として贈ったものだったのだと 後に知ることになる。

ボクたちは この大きな黒い傘と 小さなコウモリのキーホルダーが繋いだ運命の糸を 雨の紫煙の中 確かに手繰り寄せた。

あの雨の日から ボクたちの物語は始まった 大きな傘が僕らの世界を守るように 静かに そして暖かく。右側の小さなえくぼがボクを見つめるたびに ボクは運命の奇跡に感謝する 雨上がりの空のように 鮮やかで そしてどこまでも優しい ボクとキミの未来を信じて✨

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コウモリ傘はみていた みぃ @miwa-masa

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