23.「エピローグ」
「ぐへへ」
「倒したのね!」
「やったのだ!」
宿敵を倒したことで、明るい声を上げるレピアたちだったが。
「でも……その代わり、ターサは……」
「「「「「………………」」」」」
サユの呟きに、言葉を無くす。
「ハッ! 魔王の癖に、殊勝なことしてんじゃないよ……ううっ……」
「本当、勝手に力を貸して勝手に死ぬとか、バカな奴なの! ……ぐすっ……」
ファーラが、ナフィが、皆が涙を零す。
レピアたちの仇だと思っていた相手。
堕天した元天使の魔王で、僕たちと一緒に冒険した仲間。
最初は敵だったけど、いつの間にか彼女は、掛け替えのない存在になっていた。
せっかくマヴァヌを倒せたのに、ターサがいないんじゃ……
「はぁ~。ここ、ケーキありませんの? 良い加減空腹が限界ですわ」
と、そこに、ラルシィが場違いな軽い調子で問い掛ける。
「あんた、ちょっと空気を読むし!」
怒りを露にしたカカスがラルシィの胸倉を掴むが。
「あ、そう言えば皆さんにはまだお伝えしていませんでしたわね。どうやら、世界樹が〝お節介〟したみたいですわ」
「〝お節介〟? 何言って――」
ラルシィの声が、突如出現した〝太陽とは別の光〟によって止まる。
目を開けていられない程の虹色の光は、集束していくと、一つの形を成した。
それは、皆がもう一度会いたいと焦がれた人物で。
「我は……生きてるのか!? 何故――」
ターサがいた。
天使の姿だが、右半分は白髪で黒翼、左半分は金髪で白翼で、まるで堕天使と天使の中間のような容姿の彼女を見た仲間たちは。
「「「「「ターサ!」」」」」
「わぷっ!」
駆け出し、抱き着いた。
全員が倒れ込み、ターサは揉みくちゃにされる。
「もう! 仲間のために自己犠牲とか、格好つけてるんじゃないわよ!」
「あんた、無茶し過ぎなんすよ!」
「ハッ! どんだけ心配させれば気が済むんだい、あんたは!」
「本当、死んじゃったと思ったの!」
「いや、確かに我は一度死んだのだ。というか、重い! このままだと貴様らの重みで圧死する! どけ!」
「ぐへへ。これで今後もこき使えるな」とちゃんと悪役っぽく決めながら、僕は必死に涙を堪えた。
おかえり、ターサ。
※―※―※
その後。
ターサの『
ダークエルフ以外にも使えるようにした上で、同じく彼女の空間転移魔法で、ずっと待たせてしまっていたブラドラ・ベベア・フェリリ・グフォンに会いに行くと、皆心配していたようで、さっきのターサじゃないけど、巨躯で抱き着かれた僕たちは圧死するかと思った。
※―※―※
「まさか魔神まで倒してしまうとはな! 流石は我が息子だ! ガハハハハ!」
家に帰ると、父に抱き締められた。
「坊ちゃま! 御無事で良かったです!」
「流石は坊ちゃまです。また一つ武勇伝を作られましたね」
「坊ちゃま、御無事で何よりです! 美味しいお料理をたくさん食べて下さいね!」
メメイ、ワドス、そして料理長のフシェたちが温かく迎えてくれた。
※―※―※
数日後。
「魔神討伐を成し遂げたとのこと、見事であった。世界を救ってくれたこと、全ての国を――人類を代表して礼を言う」
ティームヴィック王国国王さまに謁見した僕たちは。
「褒美に、金貨一万枚を与える」
十億円相当の褒賞を貰った。
「ぐへへ。みんなで山分けだ」
前回同様、褒賞は仲間たちと共に――〝九人〟で分け合った。
※―※―※
そうそう、僕にとって、とても大きな出来事があった。
《ヴィラゴ、本当に成し遂げてしまうだなんて! ビックリよ、本当におめでとう!》
「ありがとう、サポさんのおかげだよ!」
脳内に響く声――サポさんと会話していた時に、異変が起こった。
《……う……あぁ……!》
「どうしたの、サポさん!? 大丈夫?」
《……だ、大丈夫よ。ただ、今のは一体……?》
「何かあったの?」
《……一瞬だけだけど、何か映像が思い浮かんだ気がしたの。って、変よね。私はただのサポートシステムなのに》
「何言ってるの!? あんぽんたん!」
《!》
僕の叫び声に、サポさんが息を呑む。
「全然変じゃないよ! それに、サポさんはただのサポートシステムなんかじゃないよ! 大切な仲間だよ!」
《! ありがとう……》
サポさんは、少し思考した後、静かに語り掛けてきた。
《あのね、ヴィラゴ。お願いがあるの。良いかな?》
「うん、良いよ!」
《ヴィラゴの七つスキルの一つ『全状態異常無効』を使ったあの魔法――解呪魔法を掛けてくれないかな?》
「え!? サポさん、呪いに掛かってるの!?」
《呪い――じゃないかもしれないけど、記憶が封印されてる気がするんだ。きっと、冒険を経て大きく成長した今のヴィラゴなら、解けるんじゃないかと思って》
「そっか! うん、分かった!」
僕は、まずは「『
「『
《うっ! ああああああッ!》
サポさんの叫び声が聞こえなくなって。
「サポさん? サポさん!? 大丈夫!?」
心配になって声を掛けると。
《そうだったのね……そういう〝想い〟だったのね、この気持ちは……》
「サポさん……?」
何か一人で納得した様子のサポさんに、僕は首を傾げる。
《えっとね、ヴィラゴ。思い出したの。私は貴方の母親のシンシィだって》
「え!? ……本当に!?」
目を丸くする僕に、サポさん――母さんは、穏やかに答える。
《ずっと病弱で、貴方が転生する前日に病死した私は、不憫に思った女神さまによって転生の機会を与えられたわ。でも、私は知らなかったのだけど、転生って普通は異世界に行くものなのね。でも、私は貴方の傍にいたかった。どんな姿でも、どんな形でも良いから。そう懇願したら、特例として、女神さまが、〝前世の記憶を失った状態で良いなら〟という条件をつけて、貴方のサポートシステムとして転生させてくれたのよ》
「そうだったんだ!」
まさかサポさんが母さんだったなんて!
ビックリだ!
《ヴィラゴ……大きくなったわね……》
「……母さん……!」
こうして、僕はこの世界の母親と出会うことが出来た。
※―※―※
「ほ、本当か、ヴィラゴよ!?」
母の話を聞いた父の声が震える。
父が動揺しているところなんて、初めて見た。
「ぐへへ。父上、母上と話してみますか?」
「そ、そんなことが出来るのか!?」
「ぐへへ。はい、恐らくは。まずは、母上の声・存在感・この世界への影響力を増幅します。『
恐る恐る、父が僕の額に自身のそれをくっつける。
《あなた……久し振りね……》
「! シンシィ! おお、シンシィ!! シンシィ!!!」
父の頬を涙が伝う。
真の悪役貴族は、市民だけでなく、家族や使用人にもその雄姿を、その偉業を見せつけないといけないからね!
これからは父さんだけでなく母さんにも僕の格好良い姿を見てもらえるし、本当に良かったよ!
あ、あと。
……父さん、本当に良かった……長生きしてね。
※―※―※
「ぐへへ。美味いな」
「本当、美味しいわ!」
今日は約束通り、レピアとデートする日だ。
デートなんてしたことないし、よく分からなかったけど、レピアはずっと楽しそうにしているから、間違ってはいないらしい。
まぁ、それは良いんだけど。
「ぐへへ。順番とは、中々やるな」
今日はレピア、明日はファーラ、明後日はナフィと、何故か順番にデートすることになっていた。
更に、これも謎なんだけど、その後も日替わりでサユ、ラルシィ、カカス、エルルリとデートすることになっている。
百歩譲ってそれは良いとして。
「ぐへへ。お前ら、それで隠れたつもりか?」
レピアと共にレストランを出た僕は、路地裏から顔だけ出している少女たちに声を掛ける。
トーテムポールみたいになっていた彼女たちは、一瞬慌てるが、観念したらしく、むしろ堂々と出てきた。
「ハッ! 恋は戦争って言うからね! 明日まで待てなくてね!
「ナフィは別に焦ってなんていないの! でも、一刻も早くヴィラゴさまにナフィの魅力を知ってもらった方がヴィラゴさまも嬉しいんじゃないかと思っただけなの!」
「いや、別に自分はそういうアレじゃないんすけど、でもまぁ、せっかくの良い機会っすから、しておこうと思っただけっす!」
「別に
「キャハッ♪ 何か楽しそうだから、カカスちゃんも参上してみたし!」
「父さんの仇を討てたお礼に、楽しいデートをしてあげるのだ!」
「……勘違いするなよ? 我はこやつらに無理矢理連れてこられただけだ。だが、まぁ、貴様との冒険は楽しかったからな。デートとやらも、やってやらんでもない」
何と、ターサまでいる!
《で、ヴィラゴ? どの子にするの?》
どこか楽しそうな母さんの声が脳内に響く中。
「ヴィラゴさま!」
「ヴィラゴさま!」
「ヴィラゴさま!」
「ヴィラゴ!」
「ヴィラゴ・フォン・テンドガリア!」
「ヴィラゴ!」
「ヴィラゴ!」
「ヴィラゴ」
『鑑定』によって、どうやら彼女たちが一種の興奮状態にあるらしいことを察した僕は、迫り来る彼女たちを見て、くるりと踵を返すと、スピードを『増幅』した。
「ぐへへ。俺様は真の悪役貴族だ。その偉大さ、その能力は、何人たりとも辿り着けない境地にある。その俺様とデートしたいと言うのならば、せめてスピードくらいは比肩するのだと、その身を持って証明してみせろ」
僕の言葉を合図に、八人の少女たちの目がギラつく。
こうして、S級の実力を持つ彼女たちとの壮絶な鬼ごっこが始まったのだった。
―完―
※ ※ ※ ※ ※ ※
(※最後までお読みいただきありがとうございました! お餅ミトコンドリアです。
一月一日から新作を投稿する予定です。
そちらも何卒宜しくお願いいたします!)
もしも世界一悪役ムーブが下手な男が悪役貴族に転生したら お餅ミトコンドリア@悪役貴族愛され勘違い @monukesokonukeyuyake
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