19.「最悪の再会」

 サユ、魔王ターサ、エルルリと共に魔法で空間転移した僕は、レピア、ファーラ、ナフィ、カカスの姿に驚き、思わず目を見張る。


「! ぐへへ」

「ヴィラゴさま!?」


 思わず素が出ちゃいそうになって、慌てて悪役笑いで誤魔化す。


 何でみんながここに!?

 僕たちはマヴァヌを探しに来たのに!


「ヴィラゴさま、あの……あたし、ヴィラゴさまのことが――」


 炎魔法に照らされて頬を朱に染めたレピアが、意を決して何かを伝えようとしている。


 と、その時、僕は視界に入ったあるものに気付いた。


 指輪だ!


 何であの指輪をしてるんだ、〝彼女〟が!?


 まさか――


 みんな、逃げて!


 口を開いて、言葉にしようとするよりも、一瞬早く。


「がはっ!?」

「!?」


 ――背後から長剣で貫かれ、レピアが倒れた。


「ぐはっ!?」

「がぁっ!?」


 と同時に、ファーラ、ナフィもまた、同様に剣で胴体を刺されて倒れる。


「ぐへへ。よくもやってくれたな、正体を現せ」


 キン


 カカスの姿をした犯人に対して、僕はオリハルコン製の長剣で斬り掛かるが、防御魔法に阻まれ、刃が通らない。


「フフフッ。気付くのが遅過ぎですよ、ヴィラゴ君」


 カカスの声が男のそれに変化、背も伸びて身体も変化した後、マヴァヌは胸元から取り出した眼鏡を掛けた。


「おかげでワタシは、君のS級の仲間をこうして〝四人〟も始末することが出来ました」

「!」


 カカスも手に掛けたのか!


「………………」


 何故か魔王ターサをチラリと一瞥するマヴァヌに、サユが怒りをぶつける。


「許せないっす! 『サンダー』!」


 高速で襲い掛かる雷撃は、しかし、標的には当たらず、壁にぶつかった。


「せっかくなので、ワタシの城で決着をつけましょう。お待ちしていますよ。でも、早くしないと、犠牲者が〝もう一人〟増えてしまいますから、出来るだけ急いだ方が良いですよ? フハハハハハ!」


 指輪を光らせ姿を消したマヴァヌの嘲笑だけが響いた。


「マズいのだ! 最上級回復魔法でも全然回復しないのだ!」


 僕がマヴァヌに斬り掛かった瞬間に、光魔法で周囲を照らしながらレピアたちの治療を試みていたエルルリが、悲痛な声を上げる。


 両手を翳す彼女の前に仰向けで寝かされたレピアたちの胸は、禍々しい魔力を放つ剣で背後から貫かれており、吐血と患部からの出血のみならず、全身に次々と裂傷が出来て血が噴き出す。


「ぐへへ。『鑑定』。やはり呪いだな。『解呪ブレイクカース』」

「駄目なのだ! 解呪が効かないのだ!」

「そんな!? どうすれば良いんすか!」


 レピアが、光を失った瞳で僕を見詰める。


「……ヴィラゴ……さま……あたしは……ヴィラゴ……さまが……好き……」

「!」

「……やっと……言えたわ……良かった……これで……思い……残す……ことは……もう……何も……ない……わ……」

「このあんぽんたん!」

「……え……?」

「言って終わりか? そうじゃないだろ! 俺様の――真の悪役貴族の部下なら、そんなことで満足するな! 俺様にどうして欲しいのか言え!」

「!」


 レピアの瞳に、再び光が宿る。


「……もし……今回の……任務が……無事に……終わったら……ヴィラゴ……さまに……デート……して……欲しい……!」

「……ぐへへ。良いだろう」

「! ……ありがとう……ございます……!」


 僕の言葉に、レピアが目に涙を浮かべながら微笑む。


 僕の大切な仲間を、こんな目に遭わせるなんて!


 僕は拳をきつく握り締める。


「ぐへへ。ターサ、力を貸せ」


 言うことを聞かせるために革袋から骨を取り出そうとしていた僕に対して、魔王ターサは意外な反応を見せた。


「仕方ないワン。やってやるワン。〝アイツ〟の目論見通りに事が進むのは気に食わないワン」

「ぐへへ。説得の手間が省けて良かった」

「それはそれとして、骨は貰うワン! ワオン! これこれ、これだワン!」

「いや、〝魔王に自分の命令を強制的に聞かせる〟呪いのこと忘れてるっすよね、ヴィラゴ?」


 袋に戻そうとしていた骨をターサがバッと奪うと、サユが半眼で突っ込む。


「ぐへへ。行くぞ、ターサ。『解呪ブレイクカース』」

「やってやるワン! 『解呪ブレイクカース』!」


 僕とターサの魔法が重なり、レピアたち三人が光に包まれるが。


「これも駄目なのだ!」

「ここまでやって解けないんすか!?」


 僕は、俯いて素早く思考する。


 〝アレ〟を使うか。


「ぐへへ。エルルリ。ターサ。お前たちの回復魔法と解呪魔法を、俺様の魔法と『結合』する。俺様の七つスキルの一つでな」


 エルルリとターサが頷く。


「よく分かんないけど、それに懸けるのだ! 『ウルトラヒール』!」

「そんな隠し球を持ってたなら、さっさと使えワン! 『解呪ブレイクカース』!」

「ぐへへ。『解呪ブレイクカース』。並びに固有スキル『結合コンバイン』」


 三つの魔法が一点に集束、直後に光の奔流が溢れ出す。


「『超回復解呪魔法ウルトラヒーリング・ブレイクカース』」


 膨大な量の光の粒子が、レピア・ファーラ・ナフィの体内に入り込むと、〝内側〟から身体が輝き、傷が塞がっていく。


 と同時に、三人を貫いていた凶刃にも光が侵食して、内部から破壊、消滅させる。


「……すごい! あれだけの傷が、完全に治ってるわ!」

「ハッ! 本当、ヴィラゴさまはどこまでもすごいね!」

「だって、それがヴィラゴさまなの! すべてを超越するの! ナフィは知ってたの!」


 完全回復したレピアたちが立ち上がる。


 「ありがとう!」「ハッ! 感謝してるよ」「ありがとうなの!」と、感謝の言葉と共に抱き着いてこようとする三人を僕は手で制止した。


「ぐへへ。カカスの救出が先だ。エルルリ。このダンジョン――じゃなくて、火山内部か。このすぐ近くにダークエルフがいるはずだ」

「探してみるのだ! 『感知ディテクション』! いたのだ!」

「俺様たち全員を連れていけ」

「分かったのだ! 『ワープ』!」


 空間転移した先は、執務室のようだった。


「……ぐっ……助けに来るの……遅いし……!」


 床に転がされているカカスの胸に、レピアたちを襲ったのと同じ剣が突き刺さっている。


「『超回復解呪魔法ウルトラヒーリング・ブレイクカース』」


 再びエルルリとターサと僕の魔法を結合して、カカスの傷も治して、凶刃を消した。


「ああもう! 滅茶苦茶痛かったし! 絶対に許さないし、あの男!」


 隙を突かれて襲われたらしい彼女は、髪を掻きむしり地団駄を踏む。


 どうやら、呪術魔法を使える彼女は、解呪魔法を必死に掛け続けることで、解くことは出来なかったものの、呪いの進行を遅らせることで生き延びたらしい。


※―※―※


 レピアたちに改めてエルルリを紹介した後。


「『感知ディテクション』! 見付けたのだ!」


 目を閉じて集中していたエルルリが、目を開けて力強く告げる。


《〝身体に十個の穴が開いて死亡エンド〟のフラグが立ちました。いよいよ決戦よ、ヴィラゴ。どうか死なないで!》

「うん、分かった! 絶対に勝つから! ありがとう、サポさん!」


 小さな声でサポさんに返事をした僕は、仲間たちの顔を一人一人見た。


「ぐへへ。準備は良いか、お前ら?」

「勿論っす! 勇者として、絶対に成敗するっす!」

「父さんの仇を討つのだ! そして、母さんが味わった苦しみを百倍にして返してやるのだ!」

「ラルシィを助け出して、両親と村のみんなの復讐も果たすわ!」

「ハッ! あたいがぶっ殺してやる!」

「ナフィがけちょんけちょんにしてやるの!」

「ダークエルフとして、あんなのを野放しに出来ないし!」

「我はただ〝アイツ〟が気に食わないだけワン」


 僕はエルルリに目配せする。


「ぐへへ。行くぞ」

「分かったのだ! 『ワープ』!」


 僕たちが空間転移した先は。


「フフフッ。遅かったですね」


 薄暗い玉座の間らしき広い部屋で、壁には松明が焚かれている。


 最奥にて玉座に座るマヴァヌと、その傍らにて、天井・床・壁から生えた触手によって空中に束縛されたラルシィ。


「ヴィラゴ!」


 僕たちの姿を見た彼女の瞳が潤む。


「そう言えば、魔王を倒すときに、こんなことをしていましたよね、ヴィラゴ君? 少々真似してみるとしましょうか。」


 マヴァヌが指を鳴らすと。


「がはっ!? あああああああああ!」

「!?」


 ラルシィの腹部を食い破って、十対の黒翼を背中から生やした漆黒の巨大モンスターのようなものが生み出される。


「魔神復活です。しかも、千年前とは比べ物にならない程の強さで! フハハハハハ!」


 マヴァヌの哄笑が響いた。



 ※ ※ ※ ※ ※ ※


(※お読みいただきありがとうございます! お餅ミトコンドリアです。


現在、カクヨムコンテスト11に参加しています。

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