20.「決戦」
「グオオオオオオオオオ!」
「「「「「!」」」」」
魔神がその巨大な拳を床に叩き付けると、人智を超えた衝撃で城が崩落した。
その隙を突いて、崩れ行く城の中でラルシィを救出して、仲間たちと共に跳躍。
「ぐへへ。お前ら、力を貸せ。コイツを救うぞ」
外――満月が照らす荒野に脱出した僕は、エルルリとターサに呼び掛ける。
「任せるのだ! 『ウルトラヒール』!」
「仕方ないワン。『
「ぐへへ。『
一点に凝縮された三つの魔法が、光の奔流を生み出すが。
「何でなのだ!? 呪いが解けないのだ!」
地面に寝かせたラルシィに掛かった呪術魔法を消すことが出来ず、傷も治せない。
くそっ! レピアたちに掛けられていた呪いよりも更に強力なのか!?
どうすれば――
「キャハッ♪ あーしの魔法も使うし! 『
「! ぐへへ。よくやった。『
更にカカスの魔法も合体させると、一瞬、昼間かと見紛うほどの量の光の粒子がラルシィの体内に染み込み、呪いを解除すると同時に、大きく裂けた胴体も元に戻った。
「解呪出来たのだ! でも、意識が戻らないのだ!」
「ぐへへ。身体の中から無理矢理魔神を誕生させられたんだ。心身ともに極限まで削られたはずだ。傷は治っているから、あとは寝かせておけ。カカス、エルルリ。コイツを敵から守れ」
「了解だし!」
「分かったのだ!」
「みんな、来るっすよ!」と、聖剣を構えるサユが、崩壊した城の方を睨み付ける。
「せっかく面倒くさい芝居までして戦力を四人削いだと思ったのに、全員生き延びただなんて。ゴキブリ並みの生命力ですね。フフフッ」
瓦礫の山から魔神を従えて出てきたマヴァヌが立ち止まり、眼鏡の位置を直す。
流石は固有スキル〝スーパーテイム〟、魔神すらも意のままに動かせるようだ。
「父さんの仇なのだ!」
「両親と村のみんなの復讐、ここで果たすわ!」
怒りをぶつけるエルルリとレピアたちにも、マヴァヌは涼しい表情を崩さない。
「その程度の実力でワタシたちと渡り合えると思っているとは、愚かなことです。そうですね、まずは〝彼ら〟を倒して下さい。そうしたら、ワタシたちが相手をしてあげますよ」
マヴァヌが口角を上げ、無造作に手を翳すと。
「「「「「……ア゛ア゛ア゛ア゛……」」」」」
「「「「「!」」」」」
地中から無数のアンデッドが現れた。
人間・獣人・モンスターと、様々な動く死体がゆっくりと僕たちに向かって歩いてくる。
「原作ゲームだとアンデッドなんて出てこないんすよ! アイツ、スーパーテイムと呪術魔法だけじゃなくて、ネクロマンサーの能力まで持ってるんすか!? チート過ぎっすよ!」
アンデッドを知らない仲間たちのために、僕はその生態を教える。
「ぐへへ。あのモンスターは動く死体そのものだ。それ故、通常攻撃では倒すのが難しいが、弱点はある。炎だ」
「ハッ! そうと分かれば話は早いね! 『ディストラクティブ・ファイアアックス』!」
「キャハッ♪ 色んな属性の魔法を使える最強カカスちゃんにお任せだし! 『ファイアブレード』!」
ファーラが炎に包まれた戦斧を地面に力強く叩き付けると、放射状に割れた地面から炎が吹き上がり、カカスが両手を翳すと、虚空に幾多の炎剣が出現、それぞれ迫りくるアンデッドに襲い掛かる。
一気に半分ほどを消し炭にするが。
「ワタシは優しいですからね。補充してあげましょう。フフフッ」」
「「「「「……ア゛ア゛ア゛ア゛……」」」」」
新たなアンデッドが地中から生み出される。
「ハッ! キリがないね!」
再度ファーラが戦斧を掲げると。
「「「「「……『……カ……ー……ス……』……」」」」」
「「「「「!」」」」」
アンデッドたちが一斉に呪術魔法を発動。
「ぐへへ。戻れ」
「チッ!」
「『プロテクト』!」
「ぐへへ。『
跳躍したファーラが僕たちのもとに戻ると、カカスが防御魔法をドーム型に展開、僕たち全員を包んだそれを僕の固有スキル『増幅』によって強化して、数多の漆黒の呪いを防ぐ。
「ちょっとコレ……多過ぎだし!」
両手を翳しながら額に汗を浮かべて顔を歪めるカカス。
見ると、防御魔法が呪いに侵食されて、黒く染まっていく。
「その呪いは〝壊死〟です。触れた個所から順に身体が崩れ落ちていきますよ。フフフッ」
愉悦に目を細めるマヴァヌに、エルルリが悲痛な声を上げる。
「こんなの、どうすれば良いのだ!? このままじゃ、全滅なのだ!」
すかさず僕は叫んだ。
「このあんぽんたん!」
「あ、あんぽんたん!?」
「真の悪役貴族は、絶対に諦めない。だから、俺様の部下であるお前にも、諦めるなんてことは絶対に許可しない」
「!」
「そして、何より、真の悪役貴族である俺様は、他のどんな悪役にも絶対に負けない。お前たちをずっとこき使い続けるために、死ぬ訳にはいかないからな」
「ヴィラゴ……」
エルルリの頬が紅潮する。
ふっふっふ。僕のあまりの悪役っぷりに圧倒されたようだね!
本当、自分でも分かるよ! かなり板について来たよね!
もう悪役マスターと言っても良いくらいかも!
じゃあ、悪役貴族っぽく、一掃するとしよう。
「ぐへへ。『
七つスキルの一つである『浄化』の神々しい光が周囲を満たすと。
「! 全部消えちゃったのだ!」
あれだけいたアンデッドが全て消滅した。
「ぐへへ。借りるぞ」
「またっすか! 良いっすけど!」
またアンデッドを生み出される前に勝負を付けようと、僕は跳躍、サユから借りた聖剣を空中で上段に構える。
「『雷氷炎風水鉄岩光土砂泥霧植物魔法剣』」
「何でしれっと一人で十三種の多重魔法剣を出来るようになってるんすか!? しかも一瞬で!」
虹色の光を放つ聖剣を、僕はマヴァヌに叩き付けんとするが。
「グオオオオオオオオオ!」
「残念ですが、ワタシと戦うにはまだ早いのですよ。フフフッ」
「!」
魔神が手で庇い、マヴァヌには届かない。
「少しだけ魔王に見た目が似てるっすね、アイツ!」
「我はもっと格好良かったワン!」
十対の黒翼を持つ魔神は魔王だった時のターサよりも牙の数も角の数も多く、長い尻尾が十本生えており、二十個の目がある。
っていうか、硬い!
重ね掛けした魔法剣が全然効かない!
「魔王ごときと戦った際の技が魔人相手に通用するわけがないでしょう。フフフッ」
余裕の笑みを浮かべるマヴァヌには構わず、風魔法で空中に浮遊しつつ僕は魔神に一撃を食らわせんとして、聖剣で何度も斬り掛かる。
「ヴィラゴさま! あたしたちも!」
そう言って跳躍しようとするレピアたちに向けて、マヴァヌが首を横に振った。
「君たちでは力不足ですよ。それに、まだまだ彼らはいますからね」
「「「「「……ア゛ア゛ア゛ア゛……」」」」」
新たにアンデッドが生み出されて、彼女たちの行く手を遮る。
呪術魔法を発動されない内にまずは頭部を破壊して詠唱出来ないようにした上で炎魔法で止めを刺そうと、氷魔法・風魔法などを駆使して戦うレピアやナフィたちに、僕は呼び掛けた。
「ぐへへ。お前ら、全員俺様に向かって武器を投げろ。アンデッドとは魔法だけで戦え」
「分かったわ!」
「ハッ! 託したよ!」
「ナフィのナイフも使ってなの!」
レピア・ファーラ・ナフィのオリハルコン製のレイピア・戦斧・ナイフが投擲される。
「『
それらと聖剣、更に僕自身が持つオリハルコン製の長剣を固有スキルで結合。
「ぐへへ。これでどうだ。『
「グオッ!?」
「! へぇ~」
魔人の手を僕の『硬化聖剣』が切り裂いて、血飛沫が上がった。
「やったわ!」
アンデッドたちと戦いながらレピアたちが歓声を上げる。
「ダメージを与えてしまいましたね? 『
「! 呪いか」
黒い霧状の魔神の呪術魔法が僕に襲い掛かった。
「『プロテクト』!」
「ぐへへ。『
カカスの防御魔法と僕の『増幅』で防がんとするが。
「!」
防御魔法が瞬時に破壊される。
「やらせないのだ! 『ウルトラヒール』!」
「世話が焼けるワン。『
「あーしも力を貸すし! 『
「ぐへへ。『
四人掛かりの『超回復解呪魔法』は、だがしかし。
「ぐぁっ!」
魔神の呪いを打ち消すことが出来ず、黒霧に触れた僕の両手両足が黒く変化、先端から順にボロボロと崩れ落ちていく。
「魔神の呪いですよ? しかも、千年前よりも更に成長した世界樹の魔力を取り込み、このワタシが千年間で培った技術を全て注ぎ込んで生み出した最高傑作が発動した呪術魔法です。そんな魔法で解呪される訳ないでしょう。フフフッ」
マヴァヌが暗い笑みを浮かべた。
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