14.「他国への潜入調査」
「ぐへへ。中々の悪役っぷりだな」
本当はもっと思い切って攻撃出来れば良かったんだけど、ラルシィに当たってしまうかもと心配で、勇者の聖剣を拝借するという考えにも至らず、風魔法も使わずに普通に跳躍し、魔法剣も使わなかったんだよね。その結果、取り逃がしてしまった。
「ヴィラゴさま! 今すぐ追い掛けるわ!」
「ハッ! 地の果てまで追い詰めて、ぶっ殺してやるさ!」
「ナフィが、けちょんけちょんにしてやるの!」
レピア・ファーラ・ナフィの目が血走っている。
家族や村の仲間たちを殺されたのだ、当然だ。
「ぐへへ。お前たちの家族・仲間の仇だ。当然落とし前はつけさせる。ラルシィも救い出さないといけないしな。だが、そもそも、どこに逃げたのかが分からなければ、探しようもない」
僕が「サユ。アイツは原作に出てくるのか?」と聞くと、彼女は首を横に振った。
「魔神復活というイベントがあって、なんか魔神復活を画策している奴がいる、みたいな描写はちょこっと出てくるっすけど、その人の名前も顔も全く出てこないし、いつの間にか魔神は復活してるっす。だから、もしかしたらそのモブがマヴァヌなのかもしれないっすね」
「だから、申し訳ないっすけど、マヴァヌの情報は全然知らないっす。能力も、拠点も」と謝った後、サユは更に続けた。
「あと、魔神って、原作ゲームだと裏ボスなんすよ。ただ、魔王と同じ程度の強さしかなくて、その点をユーザーに批判されていたっす。けど、ラルシィは世界樹の種を一週間保持した後、世界樹が復活してからは、一ヶ月の間、自分の体内に保有し続けたじゃないっすか」
大量にケーキを食べ続けた彼女の姿が目に浮かぶ。
何かしらの理由で、常にエネルギーを補充し続けなければならなかった彼女の様子が。
「ぐへへ。なるほど。世界樹を自分の体内で、自身の魔力で育てていたのか。そのため、今ラルシィの身体の中にある世界樹の力は原作よりも強くなっており、それを使って魔神を復活させると、本来よりもずっと強い状態で復活する可能性がある、ということだな?」
「そういうことっす。正に世界の危機っすよ! 絶対に魔神を復活させちゃダメっす!」
僕は、俯いて思考した後、サユに問い掛けた。
「今すぐ復活させる、という可能性はあると思うか? 例えば、今日中とか」
「いや、それは流石にないんじゃないっすか? マヴァヌは、出来るだけ魔神を強くしたいと思ってるはずっす。千年前に、世界樹は一度枯れ果ててるじゃないっすか? あれ、原作ゲームだと、魔神復活のために魔力を全て吸い尽くされてしまったのが原因だったんすよ」
「!」
そうだったのか!
「でも、魔王と同じくらいの強さしかなかったし、慌てた人間国が力を合わせて、勇者を何人も異世界から召喚して、暴れ回る前に一気に倒してもらって、人的被害も物的被害も全くなかったから、歴史書にも載ってないんすけど」
だからみんな全然知らないのか。
って、え? 今の話って、もしかして――
「ぐへへ。もしや、千年前に魔神を復活させたのも、マヴァヌか?」
エルフと同じく、ダークエルフも長命だからね。可能性は十分にあるよね?
その問いに、サユではなく、カカスが横から答える。
「その通りだし。あーしの家の倉庫の中に、薄汚れた絵があって、それがマヴァヌだったし。父ちゃんと母ちゃんに、それが誰かと聞いたら、二人とも顔を顰めて、『ダークエルフの面汚しだ』と、それだけ教えてくれて、後は何も話そうとしなかったし。多分、ダークエルフが魔神を復活させたなんてことは、語ることすら憚れる、ってことだし」
カカスは、「また同じ過ちを繰り返そうとしているとか、本当に意味分かんないし! しかも今度は、千年前と違って、誰にも倒せないくらい強くした上で復活させようとしてるとか、そんなの絶対に見過ごせないし! ダークエルフの一員として、絶対に止めるし!」と、拳を強く握り締める。
そこに、サユが補足する。
「ということっす。だから、ラルシィの体内で、ラルシィの魔力を吸って成長する世界樹の魔力を出来るだけ大きくした上で、魔神を復活させようと考えているはずっす」
「ぐへへ。そうなると、今すぐに復活、とはならんな。恐らくタイミングとしては、ラルシィに十分な食事を取らせず、しかし世界樹の成長は絶対に阻害せず、むしろ促進して、世界樹がラルシィの魔力を吸収し、その生命力すらも吸い尽くした時――つまり、ラルシィが死ぬ瞬間だ」
「「「!」」」
レピアたち獣人少女三人が目を見開く。
「そんなの駄目よ!」
「ハッ! その前に救うしかないね!」
「ナフィ、ラルシィと一緒にまたスイーツを食べたいの!」
僕は、彼女たちに頷く。
「ぐへへ。タイムリミットは、五日間ってとこだろう。それまでにマヴァヌを見付けだして、倒す」
「分かったわ!」
「ハッ! 任せな!」
「ナフィ、頑張るの!」
「勇者として、仲間を救い、世界も救うっす!」
「キャハッ♪ この最強メンバーなら楽勝だし!」
僕は、「ぐへへ。良いかお前ら。俺様たちは、二組に分かれて、他国に潜入調査に行く」というと、説明を続けた。
「一組目は、俺様・サユ・魔王ターサ。もう一組は、レピア・ファーラ・ナフィ・カカスだ。マヴァヌの固有スキルである〝スーパーテイム〟だが、今判明している能力は、モンスターに呪術魔法を使う能力を付与出来るということだ。だから、二組のどちらにも、呪術魔法を使える者が必ず一人はいる、という編制にした。俺様たちは、通信魔導具で互いに連絡を取り合いながら、素早く、そして着実にマヴァヌの居場所を突き止めて、倒し、魔人復活を阻止する。あと、もし見付けたら、必ず俺様たちに連絡しろ。自分たちだけで倒そうとするなよ?」
頷く仲間たちの中で、サユだけは、「魔王と行動を共にする勇者って、どうなんすか?」と、頭を抱えて少々葛藤していたが、「ああ、もう! これ以外に方法はないっすもんね! やってやるっす! 世界を救うためっす!」と、覚悟を決めたようだった。
「ぐへへ。気合を入れろ。〝他国への潜入調査〟、開始だ」
「「「「「おー!」」」」」
※―※―※
翌日。
「ヴィラゴさま! 他国への潜入調査、頑張ってください!」
「ヴィラゴさま! 他国への潜入調査の成功を祈っています!」
「ヴィラゴさま! 他国への潜入調査、どうかお気を付けて!」
「「「「「ヴィラゴさま! 他国への潜入調査! 万歳!」」」」」
「何すかこの派手な出陣は!? 〝潜入〟の意味、分かってるっすかあああああああ!?」
ブラックドラゴン、ブラックベア、フェンリル、グリフォンに乗って、街の中央通りの頭上と地上を悠々と行進し、手を振る僕たちに向かって、聴衆が激励の言葉を贈り、両手を挙げるという光景に、何故かサユが叫び声を上げた。
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