11.「奥の手」

「クックック。作戦会議は終わったか?」


 自分の強さに絶対の自信があるらしい魔王は、終始余裕の表情だ。


「ぐへへ。わざわざ待つだなんて、随分余裕だな?」

「当然だ。我は魔王だ。敗北など有り得んからな」


 「何よ、偉そうに! こっちには最強のヴィラゴさまがいるんだから!」「ハッ! 最初の敗北をプレゼントしてやれば良いじゃないか」「ナフィ、あのおじさん嫌いなの!」と反発する全裸のレピア・ファーラ・ナフィ。


「これで良いんですの?」


 僕が渡した漆黒のマントに裸体を包んだラルシィが魔王に向けて両手を翳すと、レピアたち三人と僕、そしてサユがその背中に手を当てて、魔力を流し込んだ。


「ああっ! すごい! 力が溢れてきますわ!」


 身体が眩く輝き始めたラルシィが、驚愕の声を上げる。


「クックック。何をしようとしているのか知らんが、そろそろ待つのも飽きた。死ね。『インフィニット・ファイアブレイド』」

「「「「「!」」」」」


 先程同様、無数の炎剣が荒野を埋め尽くし、僕たちに襲い掛かるが。


「『プロテクト』!」

「ぐへへ。『増幅ブースト』」

「ほう」


 カカスの防御魔法が半球状に僕たち全員を包み、絶え間ない攻撃を防ぎ続ける。


「キャハッ♪ しょうがないからカカスちゃんが守ってやるし!」


 僕の固有スキル『増幅』によって更にその輝きが増した彼女の防御魔法は、一つ一つが最上級魔法の破壊力を持つ炎剣に触れると同時に消し去り、全て防いだ。


「クックック。では、その防御魔法ごと斬ってやろう。『獄殺剣』」


 その巨躯が手にするは、巨大な漆黒の剣。


 刃が鮮血で濡れた巨剣を構えた魔王に、サユが警戒を露にする。


「アレ、絶対にヤバいっすよ! きっとアレ、〝正義の剣〟として世界最強の聖剣と対になる〝悪の最強剣〟っすよ!」

「そうか、なら対抗しないとな。借りるぞ」

「そうそう、自分が貸して――え?」


 「ぬん」と、一瞬で距離を詰めた魔王が遥か上から振り下ろす巨剣を、風魔法を身体に纏い舞い上がった僕が、自身の折れた長剣の代わりにサユから借りた聖剣で受け止める。


「ほう。『獄殺剣』を受け止めるとはな」

「ぐへへ。〝悪の最強剣〟と聞いては、対抗せざるを得ない。真の〝悪の最強剣〟は、こっちの剣だ」

「それ、聖剣っすよ! どう考えても〝正義〟側っすよ!」


 「クックック。いつまで持つかな?」と、不敵な笑みを浮かべる魔王が激しく打ち付けてくるが、「ぐへへ。お前がな」と、負けじと口角を上げながら、その全てと打ち合い、捌く。


 キン


 『増幅』によって更にスピードを増した僕が、魔王のそれを凌駕し、聖剣の一撃を肩に食らわせるが。


「クックック。いい加減諦めろ」


 全くダメージが通らず、反撃の刃を聖剣で辛うじて受け流す。


「よし。上手いこと移動出来たな」


 ただ闇雲に何合も打ち合っているように見せ掛けて、実は、僕が誘導していたのだ。


「クックック。確かに仲間たちから距離は取れたようだが、同じことだ。貴様を殺した後、残りも同じ道を辿らせてやる」


 冷酷な双眸を細め愉悦の笑みを浮かべる魔王に、僕は問い掛ける。


「ここがどこだか分かるか?」

「見れば分かる。国境だ。まぁ、もう直我の領土となる故、国境ではなくなるがな」

「そうか。それを聞いて安心した。その程度の認識なら、絶対に〝コレ〟は防げない」


 「何を言っている?」と、怪訝な表情をする魔王を尻目に、僕は声を張り上げる。


「ぐへへ。やれ!」


 僕の声を合図に、後方からサユが叫ぶ。


「『発芽スプラウト』!」


 光り輝く魔力が彼女の両手に凝縮すると。


「!?」


 魔王の〝体内〟が発光して。


「ぐっ!?」


 絶対の防御力を誇る魔王の皮膚を〝内側から〟突き破って、何本もの植物の〝蔦〟が生えたかと思うと。


「『開花ブル-ム』!」

「がはっ!」


 サユの叫び声に呼応して、魔王の身体の中から巨大な植物が出現、地中に根を張り、魔王の巨体すらも小さく見えるほどに成長して、美しい花を咲かせた。


「ぐへへ。千年前に枯れ果てた世界樹が元々あった場所が、ちょうど俺様たちがいるここ――この真下だったんだよ」

「馬鹿な……! 世界樹はもう存在しないはずだ」

「ぐへへ。お前がサユの服を取り込んだ時に、アイツが持っていた虹色の種も一緒に取り込んでしまったんだよ」

「まさか、それが――!?」

「ああ、そうだ。世界樹の種だったんだ」

「全て貴様の掌の上だったと言うのか!」

「ぐへへ。バカめ。今更気付いたのか」


 まぁ、本当は、僕もさっき固有スキル『鑑定』で知ったばかりなんだけどね!

 まさか世界樹の種だったなんて!


 でも、今のはかなり悪役っぽかった気がする! 良い感じだ!

 悪役貴族としての成長を自分でも感じるよ!


「クックック。それで勝ったつもりか?」


 巨大な世界樹の幹にへばりついていた魔王の頭部・胴体・四肢が、ズルズルと世界樹から離れると、その内側から触手が出現、他の部分と繋がろうとして蠢き始める。


「ぐへへ。再生能力か。中々の悪役っぷりだな。だが、そろそろ決着をつけてやる」


 僕は口の端を吊り上げた。


 ※ ※ ※ ※ ※ ※


(※お読みいただきありがとうございます! お餅ミトコンドリアです。


現在、カクヨムコンテスト11に参加しています。

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