大人の反対
我ながらおかしい名前だと思う。
面白くなくおかしい名前だと思う。
そんな中出てきた彼女の名前
りりけ
もしこの中に名前が「りりけ」の方がいたら申し訳ないのだが、りりけと言う名前から感じる第一印象は「気が強い馬鹿」だ。
だが、今までの柔らかい優しい態度からして、彼女はとても気の強い馬鹿ではないのはわかる。
分かり切っている。
話を戻すと、その分かりきった女の子、りりけの顔を僕は少したりとも足りないくらいに見たことがないのだ。
この高校二年二ヶ月間の中で、まったくあっさり見たことがないのだ。
とてもきれいで、とてつもなく美麗だ。
高校生とは思えない彼女の大人しい、大人らしい雰囲気。
誰かわからないことを覗けば、好印象のみが残るのだが。
妖怪変化の類か、幻覚か、転校生か、妄想や幻想か。
とにもかくにも僕は、彼女、りりけを知らない。
「…ありがとう、りりけさん。わざわざ僕みたいな人間に話しかけてくれるなんて。君は優しい人なのか。」
「や、優しいなんて、そんなことないよ。その…」
言霊に空きを作り、空言を挟み、そっとこちらを見る知らない彼女。
「春香くんは…お友達だから…」
「お友達?」
「う、うん、お友達。違う…のかな?」
そんな目で見つめられると、こちらも否定できない。
首を傾けられない。
頷くしかできないじゃないか。
それは、友達と言う関係を疑ったことから来た罪悪感だろうか。
辛そうな、寂しそうな眼をした彼女に対する励ましの気持ちからだろうか。
僕は、素性も好きなものも知らない彼女を、認めてしまった。
見初めてしまったのかもしれない。
こんな簡単に。
こんな単純に。
彼女を、「おともだち」だと。
「…そうだよね。えへへ、ごめん、変なこと聞いちゃったよね。」
「あぁ、いや…気にしなくていいよ。間違いは誰にでもあるんだから。」
間違いは誰にでもある、なんて。
言い訳がましいにもほどがある。
相手を擁護するようで、自分の安全も保障している。
我ながら
僕ながらおこがましく思う。
約束を破っておきながら、やすやすと。
そっと、ふっと立ち上がった僕が最初にしたことと言えば、自分の机の中から一限の歴史の準備をすることくらいだった。
準備の最中、隣に着席しているりりけに見つめられる。
彼女に対する疑惑と疑問、疑念が詰まる。
だが、どこか。
これが当たり前だと、至極当然と思ってきている。
友達だから。
お友達だから。
昼休み、僕は向かう。
お友達の席でもなく、購買でもなく、隣の教室である二年二組でもなく、職員室でもなく、自動販売機でもなく。
僕は向かう。
一年三組の教室に。
ドアを開け、見知らぬ後輩をかき分け、掻き乱し。
嫌な顔をされながらも、ざわつかれながらも。
見知った後輩を見つける。
「…これはまた、懐かしい先輩がいたものですね。」
「それを言うなら来たもの…とかじゃないのか、
見知った後輩は、そっと席から立ち上がり、席のブレザーを大きく羽織る。
ネクタイを締め直し、そっとこちらを向く。
「それで、今年はどんなご相談ですか?白洲先輩。」
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