仮留
じゃじゃうまさん
知らない優しい人
「着席」
着席が嫌いだ。
正しく言うならば、着席させられるのが嫌いだ。
さらには、着席させてくる日直が嫌いだ。
日直、学校によってはその学級の委員長だろう。
奴らはしょせん僕たちと同列の生徒であり学生程度のはずなのだが。
そんなはずな学生程度に、席に座ることを命令されるという屈辱、支配感、屈服感を痛いほど痛みいるほどに感じてしまう。
貴様は何者なんだ?人一人を一言、一人言で椅子に座らせる権限が貴様にあるのか?
「着席していただいてもよろしいでしょうか?」くらいも言えないのか?
なぜ貴様の一存で、僕が椅子に着かされなければならないのか?
お前の脳と腎臓には遠慮や躊躇や謙虚などを刻まれて、刻み込まれていないのか?
そこで一方、着席が嫌なら、起立はいいのか?と言い出す者もいるだろう。
嫌に決まっている。
嫌に決まっているが、嫌なほど嫌に決まっているのだが、今回は省略する。
朝の憂鬱な自分が、こんな一言に対して感情的に感じてしまう。
頭の中の口の中ではだらだら批判と非難をこだまさせる。
いちいち細かい物事で騒ぎたがるのが、喋りたがるのが、大人の始まりなのだ。
青春が綻んでいることの、確かな証明なのだ。
青春とは儚いものなわけはない。
青春とは楽しいものではない。
青春とは苦しいものではない。
青春とは暗いものでも、さしては明るいものでもない。
青春とは経験値を貯めるための、言うなれば
‐
結局のところ、僕はこのまま席に着席させられるわけであるし、僕は抵抗も反抗も蛮行も起こさないのだが、この小さな思いを蓄積させるだけなのだが。
溜まるもの、蓄積するものに、終わりはあるもので。
いつかこのくだらない思い達が、どこかにあふれてしまったら…と思うこともあるが、まぁ、恐らくないだろう。
恐ろしくないだろう。
「…大丈夫?一限目の準備しなくていいの?」
「…誰だ?」
「あ、えっと…り、りりけって言うの。よろしくね。」
気が付けば、朝礼が終わり、一限目の準備に入っていたようだ。
自分の世界にどっぷり浸かって、遣われていたようだった。
そして、そんな僕に気を遣い、話しかけてくれたようだ。
まったく、なんて優しい奴なんだ。
僕は優しい奴は大嫌いだが、今回は特別に優しく接してやろう。
それにしても、りりけか。
全く身に覚えと記憶にない人名が隣から聞こえてきたので、聞き間違いかと思ったが、耳がこもってしまったのかと思ったが、彼女…りりけの声は確かにりりけと言った。
よく考えれば僕の席は人数的か、人為的か、構造のせいかわからないが、一番端っこに一つポツンと置かれていて、隣には誰にもいないはずなのだが、隣には小綺麗な木製の一般的な学校机が置いてある。
まさか高校生になって再び幻覚を見てしまったのか?
だが、この五感がりりけを肯定している。存在を証明している。
五感と言っても、まだ彼女を視覚で認識はできていない。
今はちょうど振り向く一瞬なのだ。
さて、りりけはどんな顔をしているのだろうか?
聞いたこともない名前だが、同じクラスメイトならば、顔を見れば大体はわかるだろう。
皆は、もし見た目も見たことのない、名前も聞いたことのない人間がいきなり突然、隣に現れたら、どうするだろうか?
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