第5話

⚡第5話:鉄と風の決闘!



◆決闘、開幕!


夜の街外れ。

月明かりの下、二つの“鉄の魂”が向かい合っていた。


一人は――鉄騎士ゼノス。

古の異世界に遺された自律戦闘兵。

もう一人は――スーパーカブ型AA01・通称カブ子さん。

そしてその背には、ひとりの少年、本田兼吉。


「……これが、じいちゃんが残した“遺産”かよ。」

「カネキチ様、気をつけて。彼の出力値、わたくしの三倍以上です。」

「三倍!? どっかの赤い彗星かよ!!」


ゼノスの剣が唸る。

「ホンダ・マサオの血を継ぐ者よ……その魂を見せてみろ!」


ガァァァァァン!!


一撃が大地を砕き、土煙が舞う。

兼吉はハンドルを握りしめた。

「カブ子さん、全力でいくぞ!」

「了解♡ エンジン出力120%、風圧制御開始!」


ブロロロロロロロロロロロロッ!!!


風が走る。

彼女の車輪が青白く光り、轍が光の軌跡を描く。


「行きます! スーパーチャージモード――オン!!」



◆風を裂くカブ


ゼノスの巨大な剣が振り下ろされる瞬間、

カブ子さんの姿が消えた。


「なに……っ!?」

「風流走行――ホンダ式ドリフト走法です♡」


カブ子さんは音速で滑走し、ゼノスの背後へ回り込む。

金属の拳が閃光のように放たれ、鉄騎士の装甲を貫いた。


ドガァァァァァン!!


火花が散り、ゼノスが膝をつく。

「……見事だ。AA型……いや、“スーパーカブ”よ。」


「この出力……まさか、燃料は何を使っている?」

「風です。」

「……風?」

「はい。この世界の“マナ風”を燃焼エネルギーに変換しています。」


ゼノスの目が驚愕に染まった。

「……マサオめ。ついに“永遠機関”を完成させたというのか。」



◆祖父の記録


戦いの終わりに、ゼノスは胸の中から小さな結晶を取り出した。

淡い青光を放つその欠片は、どこか懐かしい文字を刻んでいた。


「……これは?」

「ホンダ・マサオが残した、最後の設計データだ。」

「祖父の……?」


ゼノスはゆっくりと笑う。

「この結晶を“風の塔”に届けよ。そこに、彼の真実がある。」


そして、ゼノスの身体はゆっくりと崩れ、砂のように消えていった。

残ったのは、静かな夜風だけ。


「……行こう、カブ子さん。」

「はい♡ 風を感じます。きっと、おじいさまが導いてくれているのですね。」


兼吉はカブ子さんのハンドルを握り、夜の道へと走り出す。

月光の下で、カブ子さんのエンブレムが青く輝いた。


――スーパーカブ、再起動。次なる目的地、“風の塔”へ。

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