第4話

⚙️第4話:鉄騎士との出会い



◆静かな夜の宿


街の騒動からなんとか逃げおおせたカネキチとカブ子さんは、

城下の外れにある古い宿に身を潜めていた。


「ふぅ……まさか入城早々、伝説扱いされるとはな」

「誤解が早すぎましたね♡」

「お前の“変形ショー”のせいだよ!」


狭い部屋の中で、兼吉はカブ子さんの整備をしながら苦笑する。

彼女はメイド姿のまま、ベッドの端に座っていた。

その姿は、異世界の灯りの中でどこか神秘的に見える。


「……そういえばさ」

兼吉は工具を手にしたまま口を開いた。

「この世界でもちゃんと動いてるけど、どういう仕組みなんだ? 燃料もガソリンじゃないのに」


カブ子さんは静かに目を閉じる。

「わたくしにも、完全な記録はありません。ですが――」


そのとき、外から重い金属音が響いた。


ガン……ガン……ガン……



◆“鉄騎士(アイアンナイト)”出現


宿の窓から覗くと、路地の向こうに黒い鎧の男が立っていた。

全身が金属で覆われ、肩には古代の紋章。

まるでカブ子さんの“人型形態”を模したような姿。


「誰だ……?」


「……反応検知。旧型動力炉の反応あり。わたくしと同系統です」


「えっ!? 同じ型式ってこと!?」


鎧の男がこちらに顔を向け、低い声を響かせた。


「――貴様が、“AA型”か。」


「本体認識……確認。あなたは?」

「我は《鉄騎士ゼノス》。この地で最後に稼働する、旧世代の鉄騎兵だ。」


兼吉はごくりと唾を飲み込んだ。

まるで、ガンダムが別のガンダムに遭遇した瞬間のような空気。


「AA01……貴様がまだ動いているとはな。

 その設計者――“ホンダ・マサオ”は、すでにこの世界では伝説だ。」



◆祖父の名


「……今、なんて言った?」

兼吉の声が震えた。


「ホンダ・マサオ。百年前、この世界に召喚され、我ら鉄騎士を創造した技師の名だ。」


――ホンダ・マサオ。

それは、兼吉の祖父の名前だった。


「うそだろ……じいちゃんが、異世界の技師!?」


カブ子さんは静かに頷く。

「データ照合……一致。ホンダ・マサオ――わたくしの創造者。」


ゼノスがゆっくりと剣を抜く。

「そして、その“遺産”を受け継いだ者よ。試させてもらうぞ。」


「ちょ、ちょっと待っ――!」


カンッッ!!


金属の衝撃音が、夜の街に響いた。

火花が散り、宿の窓が割れる。

兼吉は咄嗟に叫ぶ。


「カブ子さん、避けろ!」

「はい♡――安全運転モード、解除します!」


ブロロロロロロロロロロッ!!!


カブ子さんの目が赤く光る。

その瞬間、宿の床を砕いて飛び出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る