第6話
🌪️第6話:風の塔へ!
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◆出発の朝
朝の光が差し込み、街外れの丘が金色に輝く。
昨日の激闘が嘘のように、空は穏やかだった。
「……なぁカブ子さん、ほんとに行くのか? “風の塔”ってやつに」
「はい♡ おじいさま――ホンダ・マサオ様の記録が残されているのなら、わたくしは行かねばなりません」
カネキチはヘルメットを被り、ハンドルを握る。
「……まぁ、行くしかないよな。じいちゃんの秘密、気になるし。」
「出発準備完了♡ カネキチ様、本日の目的地は北東約280キロ先――砂漠地帯のオアシス
「おお、けっこう遠いな。給油ポイントとか――」
「問題ありません♡ わたくしは風で走りますので」
「……便利すぎだろ、お前」
風が吹き抜け、二人を包んだ。
カブ子さんのエンジン音がやさしく唸る。
――ブロロロロロ……
その音は、どこか“心臓の鼓動”に似ていた。
⸻
◆砂の街サルファ
夕暮れ、オアシスの
街は活気に満ち、人々の笑い声が響く。
露店ではスパイスや果実、そして謎の魔道具が並んでいた。
「へぇ~、ここは賑やかだな!」
「カネキチ様、気をつけてください。治安があまり良くありません」
「いやいや、異世界でも観光は大事だろ?」
そう言いながら、カネキチはフルーツ串をかじる。
甘くてジューシーな果汁が口に広がった。
「うまっ!」
「……食べすぎるとお腹を壊しますよ♡」
カブ子さんはそう言いながらも、どこか微笑んでいた。
彼女の表情が、以前よりも柔らかく見える。
◆新たな同行者(ドラマチック版)
日が沈みかけた砂の
夕焼けが砂漠を紅く染め、風が音もなく吹き抜ける。
カネキチとカブ子さんは、街の外れにある古びた井戸のそばで休んでいた。
長い旅の疲れが、体にじんわり残っている。
「……風の塔、か。」
カネキチは空を見上げた。
「じいちゃんが本当にそこに何かを残したのか、確かめないとな。」
「はい♡ おじいさまは――きっと、わたくしたちを待っています。」
その時だった。
背後から“金属音”が鳴った。
カシャン……カシャン……
砂煙の向こうから、ゆっくりとひとりの青年が歩いてきた。
陽に焼けた肌、乱れた金髪。
だが何より目を引いたのは、
彼の右腕――それは鉄でできた義手だった。
「……珍しいな。人間と鉄乙女が一緒にいるなんて。」
カネキチは警戒して一歩後ずさる。
「誰だ、お前。」
青年は口の端をわずかに上げた。
「俺はリュカ。昔、この街で“鉄乙女”を修理してた者の息子だ。
……あんたの連れてる彼女――“カブ”って言ったか? まるで、伝説の試作機みたいだな。」
カブ子さんが小さく反応する。
「試作機……? リュカさん、その言葉、どこで?」
リュカは一瞬、寂しげに笑った。
「親父が言ってた。“風の塔”の奥には、もう一体、動かない鉄乙女が眠っている。
……それを蘇らせるのが、俺の夢だった。」
沈黙。
カネキチの胸がざわめいた。
この青年――ただの旅人じゃない。
彼もまた、“ホンダ・マサオ”の残した何かと、繋がっている。
「なぁ、リュカ」
「なんだ?」
「……俺たち、風の塔を目指してる。けど、道がわからねぇ。案内してくれないか?」
リュカは一瞬だけ空を見上げ、
そして、少し笑ってうなずいた。
「いいぜ。ただし――条件がある。」
「条件?」
リュカは義手を軽く掲げた。
その金属の指先が、カブ子さんを指す。
「俺にも、“鉄乙女”をもう一度見せてくれ。
……あの日、止まったままの夢を、動かしたいんだ。」
風が吹き抜け、三人の間の砂をさらっていく。
その風の向こう、遠くの地平線には、かすかに塔の影が見えた。
「決まりだな。」
カネキチが笑い、
カブ子さんが微笑んだ。
――こうして三人は、“風の塔”を目指す新たな旅路へ走り出した。
◆夜のオアシス
その夜、三人は焚き火を囲んだ。
砂漠の風がやさしく吹き抜け、星空が広がる。
「……なぁ、カブ子さん」
「はい?」
「お前さ、異世界でこんなに頑張って……怖くないのか?」
「怖いです。でも――」
カブ子さんは、少し照れたように微笑んだ。
「カネキチ様が一緒に走ってくださるから、大丈夫です♡」
兼吉は顔を赤らめて、火を見つめた。
「……お前、ずるいこと言うなぁ」
風が笑うように吹き抜けた。
そして夜空の向こうで、どこか遠くの塔が一瞬だけ光を放った。
――それが、“風の塔”の呼び声だった。
スーパーカブ、異世界を駆ける! 〜祖父の形見が最強の美少女でした〜 @En-En
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