1話

 〜バイト初日〜

 バ先にいち早くついた俺は、いかにもうざそうな先輩と鉢合わせしてしまった。


「お前誰?」


 バイトで来ました、と言おうとしたがなぜか口が開かない。戸惑っていると思いっきり上から目線で煽られた。


「お前バイトか?調子のんなよ。俺はお前なんかよりもずーっと偉い店員様なんだからなぁ!」


 うざい。とてもうざい。この人と今から一緒に仕事をするのか…と思っていた次の瞬間。先輩の姿が消え、どこからともなく悲鳴が聞こえる。


「は…?」


 自分がやったのかと疑い両手を見る。しかし、何も手がかりは掴めず。少し心配もあったが気にせず仕事を始めることに。


「おはようございます!!」


 一応大きな声で挨拶をしておく。もちろん誰もいない。仕事が何も見つからなかったのでおいてあった皿を洗っておく。二度洗でも構わない。しばらくして店長らしき人が店の中に入ってきた。


「君が新人かい?おはよう。遅れて済まなかったね」


「おはようございます。」


 少し気まずい空気が流れたあと、さっきの先輩がきた。


「おはようございます。」


 ん?さっきはこんな落ち着いていなかったはずだ。違和感に気づいたのは俺だけじゃなく、他の店員や店長もうざかった先輩の態度、言動などに違和感を感じていた。 まさか。

 この時、感が鋭かった俺に見抜けないものはなかった気がする。


「店長が言ってたオーラってこのことか?」


 まあ随分良心的な能力ですね、とため息を吐く。


「どうせならもっとかっこいいオーラを持っててくれよぉ」


 この能力は、自分にとって良くないことをした人を自動的に更生させるオーラであった。正直いらない。

 まぁ自分にとっての悪影響が一人につき一回までといったところだろうか。周りの人はみんな羨ましがっている。俺はもともとメンタルが強く、そういうことにうざいとかは感じるけどすぐ収まる方だった。


「はい、もうそろそろ開店時間だよ。」


 みんな口を揃えてはい、という。俺も少し遅れてハイという。


「あーごめんごめん!バイトの子の割り振りまだだったね。」


 遅ぇわ。そういうのってもっと早くやるもんじゃないの?


「じゃあ君は食卓に配膳してくれると助かるな。」


「えっ、はじめから配膳作業ですか」


 戸惑いを隠せずにいる俺は適当に決めましたよと言わんばかりの顔の店長にどうしても目が行く。


 〜開店時間〜

「いらっしゃいませ〜」


 女性店員の甲高い声が店内に響く。今日もお客さんたくさんだねぇと店長はニコニコしながら俺の方を見つめてくる。最近はAI配膳ロボの普及によって配膳作業が減ってきているからか、比較的楽ではあった。こんな簡単な作業で時給2000円?もう一度考えるが、やはりおかしい。


「ここのレストランはね、一日の売上が1,000,000万を超えるんだ」


本当か?と思い売上成績を見せてもらうと、まじで超えてた。びっくり仰天。

まさかの合法だった。


「こんなの得しかねーじゃん」

 

家に帰り浮かれていた次の瞬間。:exzq@

感のいい人はもうお気づきだろう。

 



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