雨のバス停から始まる、ごくありふれた日常。
でもその「ありふれた距離感」を、ここまで丁寧に、静かに描けるのがこの作品の強さだと思います。
登場人物は特別なことをしないし、大きな事件も起きない。
それなのに、視線の向きや席の位置、何気ない一言の積み重ねだけで、少しずつ関係が動いていくのが心地いい。
会話のテンポは軽やかだけど、主人公の内側はちゃんと慎重で、現実的。
「気になっている」と自覚する前の、言葉にできない引っかかりがとてもリアルでした。
派手なラブコメではなく、
静かで、湿度のある、日常に溶け込む恋の始まりを読みたい人におすすめです。
読後に、雨の日のバスや大学の教室の空気が、少し違って見える作品でした。
本作は、写真を愛する少し内向的な大学生・月城直陽と、天真爛漫な少女・朝霧あまね。対照的な二人が、梅雨のバス停という日常の一コマで出会うことから動き出す、王道の、しかしそれゆえに尊い青春ラブストーリーです。
特筆すべきは、その圧倒的な「空気感」の描写です。窓を打つ雨粒、部室に漂う静謐な空気、そして少しずつ縮まっていく二人の距離感。視覚だけでなく、匂いや音までもが伝わってくるような繊細な文章は、読者を一瞬にして物語の世界へと引き込みます。
また、明るく振る舞うあまねが時折見せる「影」や、プロローグに登場する猫の存在など、単なる甘い恋愛小説に留まらないミステリアスな引きもあり、ページをめくる手が止まりません。
「青春」という季節を現在進行形で生きている人にも、かつてその季節を通り過ぎた人にも、ぜひ手に取ってほしい一冊です。雨の日が、少しだけ待ち遠しくなるかもしれません。
第3章の23まで拝読しました。
季節の移り変わりと主人公やヒロインを中心とした関係性の変化が丁寧に描かれており、大学生活のリアルな質感も合わせて、その場にいるような空気感を味わえる作品だと思いました。
登場人物の皆が、少しずつ不器用ながらも、手を取り合って前へ進んでいく姿に、ほっこりと温かな気持ちになります。
特に気になるポイントとしては、ヒロインの明るさと時折見せる影のギャップはどこから来ているのか、プロローグに出てきた猫が物語の中でどんな視点から二人を観察しているのか、の2点です。
既に完結の見通しが立っている点も合わせて、続きが楽しみな作品です!