第2話 生きている世界

《アメリカの○○州で銃の乱射事件が発生し、少なくとも十八人が死傷との報道が・・》  



「・・・」

 一人の部屋――。

 

  

 静かな部屋。


 誰もいない部屋。


 僕はそこに生きる。


 孤独は当たり前過ぎて、もう何も感じはしなかった。

 


 田中大樹。享年三十五歳。自殺。奇しくも同じ苗字。


 高校の同級生。


 クソみたいな奴だった。


 

 世界はざらざらしていていつも不快だった。いつからだろう世界がこんなになってしまったのは――



 兄弟たちよ

 泥の中で生え

 水中で成長する深い青や白の蓮(はす)が

 水面の上に伸びて

 泥と水に汚されずにいるように

 兄弟たちよ

 この穢土(えど)で育った覚者は

 仏陀もより高い世界に上がって行き

 この世の穢れを被らないのである


    サンユッタ・ニカーヤ 神々との対話 増支部経典 5―30


 

                              

 人が再び生き始める時刻、僕は一人眠りに入る――。


 最近、なんだかよく眠れない。


 眠れるというのも一つの才能と幸運だ。


 ―――― 



 我々は人里を離れ、

 孤独に住まう

 林の中、

 うち捨てられた丸太のように


              長老偈 一・六二



《パレスチナのハマスがイスラエル側に侵入し、音楽イベントに参加していたイスラエル人を次々射殺。死傷者は千二百人を超えているとの情報が・・》


《イスラエルがハマスに対する報復攻撃で、ガザでは七千人の死者が出た模様・・》



 何で世界はこんななんだろう。


 目覚める世界はいつもそう。


 気づけば世界はこんなことになっている。


 

 宇宙が永遠であろうとなかろうと

 限りがあろうとなかろうと

 生と老と病と死

 愁い

 悲しみ

 苦しみ

 悩みの火は

 現に人の身の上に押し迫っている。

 人はまず

 この迫っているものを払いのけるために

 道を修めなければならない。


                マッジマニカーヤ



 生きている世界で生きていない僕――。


 何もかもがうまくいかない。でも、それは、今に始まったことじゃない。

 それは生まれた時からずっとそうだった。



「なんだか、生きるってめんどくさい」


         がん闘病中、晩年の坂本龍一氏



 家賃、労働、生活費、世間、税金、年金、健康保険、競争、格差、就職、嫉妬、妬み、見栄、劣等感、コンプレックス、貯金、人生設計、老後・・、etc、etc・・。


「生きるって、めんどくさい」


                僕

 

 

 やっと得た喜びは、いつも一瞬でどこかへと過ぎ去って行ってしまう。


 残るのはいつも虚しさだけ・・。



 つまらぬ快楽を捨てることによって

 広大なる楽しみを見ることができるのなら

 心ある人は広大な楽しみをのぞんで

 つまらぬ快楽を捨てよ。

 他人を苦しめることによって

 自分の快楽を求める人は

 怨みの絆にまつわれて

 怨みから免れることができない。


                       ダンマパダ

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