第2章 聖女無双編

第6話 で、聖女が生まれたわけ

 「聖女になるまで色々とあったなぁ......」



 俺は誰も居ない自室でそう独り言を口にした。


 俺が聖女になるまで何があったかは割愛しよう。

 一言で言うと、俺は魔法やルシファーさんから与えられたチートスキルを駆使して、今の俺を築き上げたのだ。


 で、そんな俺が居るここは、カリデッカ聖国ブトイボー中央都市にあるボーナッガ大聖堂のとある一室である。

 ここは聖女である俺に充てがわれた部屋で、十畳ほどの広さがある。


 この部屋の中は質素なもので、読み書きするための机と椅子、ベッド、クローゼットくらいしかない。


 まぁ、聖女だから、贅沢とかできないよね。国のお金で食べてる存在だもん。



 「そんな暮らしも続けれていれば慣れるもんよ」



 ちなみに俺は三百年生きているクソババアだ。前世の年を重ねるともう少し長いこと生きてる。


 でも今の俺は見た目、十代後半の美少女。


 そう、俺は不老不死なのだ。


 たぶんこれもあの女神......ルシファーの粋な計らいというやつだろう。今の姿はもう三百年くらい維持している。


 当然、民衆もびっくり。

 でも聖女が人の寿命を超えて永遠の美少女というのは、唯一神である女神ルシファーの祝福を受けたからだと考えたらしく、不老不死の俺を快く受けて入れている。



 「ああ、ついでにもう一度、現状把握をしておこう」



 俺はステータスウィンドウを展開した。



――――――――――――――――――


【名前】 クズミ

【種族】 人

【性別】 女

【役職】 聖女

【強さ】 マジで強い

【スキル】 <代償>

【魔法】

<初級・光属性魔法:ピュアキュア>

<中級・光属性魔法:キュアヒール>

<上級・光属性魔法:オールレンジヒール>

<上級・光属性魔法:ホーリーシールド>

<上級・光属性魔法:ディバインチェーン>

<上級・光属性魔法:セイクリッドサーベル>

<上級・光属性魔法:ホーリースピア>

<上級・鑑定魔法:マスターアナライズ>

<特級・召喚魔法:銀獅子>

<特級・光属性魔法:聖なる光>

<特級・光属性魔法:聖域>

<天使級・光属性魔法:天啓授与>

<天使級・光属性魔法:死者蘇生>

<天使級・光属性魔法:即死回避>

<天使級・光属性魔法:ガブリエルのラッパ>

<神話級・光属性魔法:ゴッドヒール>


【備考】 未使用、不老不死、一日一善しないとアレされる、状態異常無効


――――――――――――――――――



 どうよ、この成長ぶり。

 自慢したいけど、他人以外には見えないからな〜、これ。


 また最初の頃より表示項目増えたんだよね。“種族”とかなかったしな。これは初級の鑑定魔法が進化して、<上級・鑑定魔法:マスターアナライズ>になったからだ。


 にしても、使える魔法が増えたな。全て<代償>スキルによって獲得したものだ。


 ちなみに<代償>スキルの悪いこと一覧にある項目について、一度達成したからってその項目が消えるわけじゃない。残り続けるのだ。

 またその項目が達成されたとき、魔法のレベルが上る感じである。

 で、それが一定以上になると、魔法が進化したり、派生して上位のものが増えたりするわけだ。


 例えば......最初の頃よく使っていた<初級・鑑定魔法:ビギナーアナライズ>は、今では進化して<上級・鑑定魔法:マスターアナライズ>になっている。


 もちろん、<代償>スキルで対象の項目を繰り返し達成してきたからだ。


 その項目はというと、



――――――――――――――――――


 ◯困っている人を助けない

【代償】

 道徳

【対価】

 少しだけ強くなる、<初級・鑑定魔法:ビギナーアナライズ>


――――――――――――――――――



 これである。


 うん、言いたいことはわかるよ。

 俺が鑑定魔法を上級まで上げるために、一体どれほどの困っている人たちを放置してきたことか。


 聖女として存在意義がブレるから、言及しないでほしい。

 この話はもうやめよう。


 また一方で、回復魔法である<初級・光属性魔法:ピュアキュア>はレベル毎に分かれている。

 <中級・光属性魔法:キュアヒール>や<上級・光属性魔法:オールレンジヒール>みたいにね。


 ちなみにこの等級については、初級、中級、上級、特級、天使級、神話級の順で効果や魔力の消費が違ってくる。

 また一般的に、特級以降を扱える人はごく僅からしい。天使級とは別に同じ等級で、悪魔級などもあるとかなんとか本で読んだことがある。


 とまぁ、この三百年で俺はここまで強くなったわけだ。時には聖女としてやっちゃいけないことをたくさんしてきた。

 毎日、誰にも見られないように隠れて煙草を吸って、<代償>スキルで強くなってきた。

 俺って本当に努力家だよな。ヤニカスとも言えるけど。


 と、そんなことを考えていたら、この部屋のドアをノックする音が聞こえてきた。



 『聖女様、ご夕食の準備ができました』



 聖女の俺に、侍女のような存在はいないが、教会のシスターたちが厚意でよくしてくれている。


 俺は聖女らしくお淑やかに応じる。



 「ありがとうございます。今、向かいます」



 ベッドの上で大の字になって寝っ転がっているけど。口調は聖女のそれだ。


 俺は身を起こし、服装の乱れが無いか、入念に確認をしてから部屋を出る。


 部屋を出た瞬間、肌寒さを感じてビクッと震えてしまった。


 今の季節は冬に移り変わろうとしている秋だ。日中はまだぽかぽかして暖かいが、日が沈むと寒い。

 俺の部屋には小さな暖炉があり、そこに火をつけて温まっていたから、寒暖差がヤバいな。


 俺の部屋の前で待っていたシスターは俺よりも年上の美女だった。いや、俺の方が遥かに年は上なんだけどね。見た目がお姉さんって感じ。


 地味で露出の少ない修道服を纏っているが、顔立ちは非常に整っており、目の下の泣きぼくろが特徴的な黒髪の美女。

 名前はラズリー。ちょっと前は茶目っ気たっぷりなガキだったが、今は垢抜けてボンキュッボンの美女に成長していた。

 良いことだ。

 そんな彼女は俺とは違い、黒を基調とした地味な修道服を纏っている。


 ラズリーが口を開く。



 「あの、お食事の後に、聖女様に頼みたいことがありまして......」


 「? 私にできることであればかまいませんよ」



 「ありがとうございます。実は山火事の対処をしていただければと......」


 「え゛」



 俺は思わず間の抜けた声を漏らしてしまった。


 や、山火事?


 ラズリーが説明する。



 「今日の昼、聖女様は街の子供たちと近くの森に行かれましたよね」



 あ、ああ、薬草採取という名目で、子供たちと川で遊んだな。いや、薬草もちゃんと採取したけど。

 それがどうしたんだろ。


 ラズリーは話を続ける。



 「その周辺の森で山火事が発生しまして......。あの子供たちを問い質したのですが、火遊びなんてしてないって言い張るんです」


 「嘘じゃありませんよ? 私もその場に居ましたから。あの子たちは火遊びをしていません」



 「聖女様がそう言うのでしたら......」


 「それにしても、今は確かに乾燥する時期ですが、別に火を扱っていなければ山火事なんて――」



 と言いかけて、俺はあることを思い出す。



 『ああー、ようやく一服できる〜』



 そう言って、俺は煙草を吹かしていた記憶がある。

 そんでもって、子供たちが近づいてきたから見られちゃマズいと思って、慌てて煙草をポイ捨てしたっけ。



 山火事の原因、俺じゃね?



 い、いや、待て。俺はちゃんと火を消した......はずだ。うん。他の人の可能性だってある。うん。


 すると、『テッテレー』という聞き覚えのある効果音が俺の脳内で響いた。俺はステータスウィンドウを確認する。



――――――――――――――――――


■■■ <代償>スキル ■■■

スキル所持者が善人の状態で、悪いことをすると強くなるスキル。



〜 悪いこと一覧 〜


◯自然破壊 !Clear!

【代償】

 道徳

【対価】

 少しだけ強くなる


――――――――――――――――――



 やっぱり俺かぁ......。

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2025年12月30日 19:11
2025年12月31日 19:11

異世界転生した九澄さん、聖女だけどクズらしい 〜スキル<代償>が強すぎた件〜 おてんと @kudariza

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