第2話 初接敵

「いやー……これが“癒される”ってやつか。

こういうのを森林浴って言うんだよな、確か。」


木漏れ日が揺れ、風が梢を渡る。

木の葉が擦れあう音と、小鳥の鳴き声が心地よく耳に響く。


「こういうのは本当に久しぶりだ、本当に。

いつもいた鯖じゃ、木は枯れるかモンスター化してたし、

他サーバーは畑の防衛で行けなかったしな。」


――お手本のような小鳥のさえずり。

並び立つ木々が吐き出す酸素の匂い。

湿った土と若草の香り。

そのどれもが、カイの削れた心を、ゆっくりと直していくようだった。


(……悪くない。いや、むしろ最高じゃないか?)


軽く深呼吸をして、空を見上げる。

青空と緑のコントラストが、これまでの“終わった世界”とはまるで違っていた。


「ギャララララ!!」


突如、安らぎを引き裂くような声。

鼓膜を突き刺す濁音に、思わずため息がこぼれた。


「……うん、まあ来るよな。」


木の陰から飛び出してきたのは、三匹のゴブリンだった。

禿げた頭、横に伸びた耳、黒く濁った目。

土に汚れた緑の肌と、不衛生な腰布。

そのどれもが――見覚えのある“初期狩場の雑魚”だ。


EエターナルAアークOオンラインそのまんまじゃん……。

てことはまだゲームってことか?」


そんなことを考えているうちに、ゴブリンが咆哮を上げる。

「ギーギャラララ!」

手にした丸太を振り上げ、突進してきた。


「……フッ。」


カイは少し強めに息を吹き。

ただそれだけで――ゴブリンの頭部が、弾け飛んだ。

辺りに血飛沫が飛ぶ。


「……おお。できたできた。

久しぶりにやったけど、案外できるもんだなぁ。」


まるで肩慣らしのように、淡々と呟く。

魔法でも、スキルでもない。ただの息吹。

けれど、ステータスカンストのSTRならそれだけでもオーガ程度は殺せる武器になる。


(……やっぱり、現実感がバグってるや。

でも、これが“ゲーム”なら、安心だな。

死ぬ心配は、たぶん――)


ふと、地面に残った血の染みを見下ろす。

それは消えなかった。

時間経過でも、風でも消えず、ぬるりと黒ずんで残る。


(……マジで、現実……?)


小さく眉を寄せ、深く息を吸う。

鼻を突く鉄の匂いが、妙に生々しかった。


「……はは、まずいなこれ、まじかー。」


そう呟き、血に濡れた土を一蹴りする。

目の前にいる残り2匹のゴブリンは恐怖に駆られ割れ先にと逃げている。


「どうせなら魔法でも使うか。『雷魔法サンダ』」


光が走る、空間が歪む。

発動した雷魔法は唸り、辺りを破壊しながら二人の標的ゴブリンを塵芥とする。

しかし、雷魔法は止まる事は無く先は先へと突き進み、木々を破壊しながら焼け焦がれた道を作っていく。


「……やべ、つい始めた頃の感覚でやっちまった。」



――――――――――――――――――――

早くも何をしたいのか分からなくなって来ました

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