25
結局集まりについて、七瀬くんに聞くことができないまま。
当日を迎えた。
何だか人を集めているらしい、大きな集まりというくらいだから、少しくらい自分を着飾って。
それに七瀬くんだっているだろうし。
「……」
朝から鏡と睨めっこ。
毛先だけ内側に巻いた髪の毛と、この前やった巻き髪を比べる。
巻こうか迷うけど、友里と待ち合わせた時間までそんなにない。
…今日は諦めよう。
なんとなく、この前の七瀬くんとの誕生日の時と緊張感が似てる。
もちろん、前回の比ではないけれど。
「……派手すぎないけど、地味ではない、、よね?」
いろんな人に引かれ気味だった誕生日の化粧を見直して、薄めに施した化粧は似合っているかは別として、この前よりかはマシだと自分でも思う。
七瀬くんは、似合うと言ってくれるだろうか。
この前は散々な言われようだったから。
……ピアスも今日はつけてきてくれるかな。
望みを完全に捨てることができずに、きっと今日は会った瞬間に彼の耳に目が行ってしまうと思う。
あわよくば、つけてくれますように。
「――いらっしゃい」
人を集めていると言っただけあって、いつもより断然に人が多い。
そんな中、いつも通り私と友里を見つけて話しかけてくれる圭太くん。
「今日って何かあるの?」
「あれ?七瀬から聞いてない?」
「聞いてないけど…」
「もしかして、ここに来ることも言ってない?」
ゆっくりと圭太くんの言葉に縦に頷くと、「マジか」と真面目な顔で考え込み始めた。
「もしかして来たらダメだった?」
「いや!…そういうわけじゃないんだけど」
理由を言いづらそうにする圭太くんをよそに、
「今から言いに行けばいいじゃん」
と、友里が軽く口をはさむ。
携帯を片手に「私、下にいるから」と続けた。
「……まあ、そうだね」
「え、今から?」
「何も伝えてない七瀬の落ち度だから、怒られたりはしないよ」
友里の発言に同調した圭太君は、開き直ったかのよう。
「…じゃあ、今から七瀬くんのとこ、行ってくる」
「……七瀬となんかあったら、今日は俺が送ってくから、声かけて」
圭太くんの最後の言葉は、まるで今から何かが起こると、断言しているみたいで、私の心をざわつかせるには十分だった。
二階に上がっていく足取りが重く感じる。
少しずつ緊張で固められていく私の体。
――――トントン、
変に緊張している。
さっきの圭太くんとの会話のせいだろうか。
「誰、」
いつもより低くて、冷たいトーンの声。
まるで七瀬くんじゃないみたいに聞こえる。
「…笹森です」
「つーちゃん?」
いつもの声に戻った七瀬くんの声。
声だけでも驚いているのが伝わってくる。
本当に、今日、私が来ることを予想してなかったんだ。
ドアを開けてくれた時、「何でいるの、」そう驚きながら、少しだけ肩を落としたように見えた。
相変わらず、この部屋は七瀬くんの匂いで満たされている。
いるだけでドキドキするこの部屋。
「……」
今日は別の意味でも胸がざわつく。
七瀬くんがイライラしているように見える。
…こんな七瀬くんを見たのは初めて。
出会ってからそんなに年月は経っていないけど、それでも今日まで見なかった姿。
言葉を発するのも躊躇うくらい、空気が重い。
”七瀬となんかあったら”
来ることも、ダメだったのかもしれない。
人を集めてほしいと、そういう話が合ったのに、伝えてくれなかったのは七瀬くんは、私には来てほしくなかったのかも。
彼女という存在が、要らなくなったのかもしれない。
悪い方悪い方に進んでしまう私の思考。
聞かないと出ない答えをずっとぐるぐる考えながら、七瀬くんの顔色を窺った。
窺いながら、不意に見た耳元。
ピアスは今日もファーストピアスのままだ。
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