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「あれ、つーちゃん来てたの?」



「あ、えっと、……うん」



いつもと変わらない七瀬くんの優しい声。


だけど、その優しさがどこか他人行儀に聞こえるのは気のせいだろうか。




さっき、可愛い女の子と絡んでいるところを見たから?



真っすぐに私を見てくる七瀬くんの目がなんか合わせられない。

七瀬くんから目をそらして、逆方向に座ってる紫夕くんを見る。


紫夕くんは今にもため息をつきそうな表情で私たちを見てる。



「紫夕くん、さっきの話の続きって…」



「は?」



「なんか気になっちゃって」



「言わねえよ。あほ」



「…」




シンプルな悪口を言って、そっぽを向いてしまった紫夕くん。




「……俺にできない内緒の話?」



急に近くなった七瀬くんの声。


気が付けば七瀬くんは私の横にピッタリくっついて横に座っていて。



私の腕が七瀬くんと触れ合う。


腕の部分だけが、熱い。





「紫夕とつーちゃん、いつの間にそんなに仲良くなったの?」




そう言って私の腰を引き寄せた七瀬くん。

その手は服の上から伝わってくるほど冷たかった。



微笑んでいる七瀬くんは、こんなにも近くにいるのに遠い存在に感じる。




「別に仲良いわけじゃない」


そうばっさり一蹴した紫夕くん。



その顔は過去最高に険しくて、また一段階深く嫌われてしまった気がした。



紫夕くんと話すといつもこう。


最終的に険しい顔をした紫夕くんに睨まれて終わる。




話す度に嫌われ度が増していく。




―――ほら、すぐに目を逸らされる。





「……友里ちゃん、ちょっとつーちゃん借りてもいい?」



七瀬くんの声に引き戻されて、紫夕くんから七瀬くんに視線が戻る。




「え、うん。つか、何で私?」



「友里ちゃん一人で帰ってねって意味」



「……」



「それか圭太か、紫夕に送ってもらって」




七瀬くんに触れて熱くなった腕がつかまれて、さらに熱が増す。



……七瀬くんの手は冷たいのに。




部屋から出る前に紫夕くんの「始まったよ」と呆れたような声が耳に届いてからドアが閉まる。




「七瀬くん、どこ行くの?」



「俺がいつも使ってる部屋」




さっき居た部屋から部屋を一つ挟んだ場所。





――この部屋はダメなんだ。




「……」



入るのを躊躇う私を少し強引に引っ張って、中に入らせる七瀬くん。



入って目についたのは一人で寝るには少し大きいベッドと、カラーボックスが一つ。




「ここ、座って」




先にベッドに腰をかけた七瀬くんはその隣を叩いて、私に場所を示す。


緊張で体が硬くなったみたいに、動きがぎこちなかったと思う。










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