第6話 祈りの込められた銀のロザリオ
時代は便利な事で溢れている。例えば星を眺めながら親愛なる人と話す事ができる。
話題は学校の先生話しになる、授業終わりに黒板を綺麗にする先生と、そのまま帰る先生の違いについてだ。更に将来の事になると和樹の口数は激減する。
それは生きる意味を問うに近かった。和樹は再発に脅えて暮らす毎日に嫌気がさす。
『あぁ、天美さん、病状は大丈夫なの?』
『えぇ、安定しているわ』
『実は半年以内に再発すると言われた……』
言ってしまったか、心配はかけたくなかったが。一人で抱え込むには重すぎる現実だ。
その後、入院して何時『極凍結状態』になっても良いようにベッドの上で暮らした。
和樹はベッドの上から窓の外を眺める小鳥になっていた。
コンコン。
病室のドアをノックする音が聞こえると同時に天美が入ってくる。
それは、待ちこがれた客人であった。
「ようこそ、天美さんだけが……」
和樹は少し言葉につまる。それほど嬉しかった。そんな思いがした瞬間であった。
『意識が消え行く……』
どうやら、『極凍結状態』になるらしい。
よかった、最後に天美さんに会えた。これで、何年眠るか分からないな……。
———……。
次に意識を感じたのは夢の中であった。
「お前、銀のロザリオをしているな」
和樹に声をかけたのは人ならざる者であった。
「この銀のロザリオが怖いのか?」
「あぁ、正反対の存在だからな」
ふふふ、ミッション系とは正反対の者か……面白いな、コイツ。
「それで何用だ」
「話は簡単、その銀のロザリオは我と等価交換された。下界に帰るがいい」
その言葉と共にまた意識がなくなる。
そして、気がつくと病院のベッドの上であった。
「よ~う、天美さん、おばさんになった割には若作りだな」
「何、寝ぼけているの?あれから、十五分しか経ってないわよ」
十五分か……ずいぶんと長く感じたな。さて、これは医者の診察の後で帰る感じだ。和樹の予想通り即退院となった。
この先の使命として天美さんが『極凍結状態』になってもいいように銀のロザリオに祈りを込めることだ。
次の日から聖臨海白浜高校の教会にて二人で銀のロザリオに祈りを込める毎日が始まった。
銀のロザリオは星々の様に輝く 霜花 桔梗 @myosotis2
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