第2話 魔法少女vs戦車in山道
静かな深夜。山の中。重たい車体が迫る音が響いている。
ヒバナは心を無にし、その瞬間を、ただ待つ。
『…10…9…8…7…6…』
スピーカーを通して聞こえるアカリの声だけが、彼女の心細さを支える。
『5…4…』
「心配しないで、攻撃は私が防ぐ」
「!!」
ヒバナの肩に手が置かれる。
(…ユイ)
頼れる相棒の存在を再認識し、ヒバナは持っているライフルの握る力を強める。
『3…2…1…』
『「「ゼロッ!」」』
「それでさ!AK-47の魅力は何と言ってもその完成度にあってだね!しかし信頼度で言ったら他に――」
「ハイソウデスネ」
昼休み、ユイはヒバナのトークに付き合わされていた。
「それでαがβをかっぱらったらイプシロンして!」
「ソウナンデスカスゴイデスネ」
「パルスのファルシのルシがパージでコクーン!」
「ソウデスカ」
(ダメだ…まるで意味が分からん)
ユイは頭を抱える。
(金田さんのアドバイスで親交を深めようとしたのは間違ってなかったと思うけど…話が全く分からん…)
「それでそれで――」
「ハハハ」
(けど…)
ユイはヒバナの目を見る。
(…何か楽しそうだし良いかな?…それにしてもかわいい顔だな…)
「ユイ?顔がニヤけてるよ?やっぱ堅実なのが一番だけど珍兵器ってのは心が躍る――」
「いや別にそういうわけでは――」
(――殺気!?)
ユイの背筋が凍る。
「…ッ!」
ユイはゆっくり後ろに向く。
そこには、殺意を込めた眼差しのアカリがこちらの様子を伺っていた。
(あれはアカリ!?何故見てるんです!?)
「おーアカリー!何見てるの~?」
ヒバナが手招きする。
「…今そっち行く」
一歩一歩近づいて来るアカリに、ユイは迫りくる死の恐怖を感じた。
「…二人とも…何してるの?」
「いやね、ユイと金田さんが魔法少女同士で交流した方が良いって言うからね、それで話を…」
「私も聞いていいよね」
アカリは笑顔だが、完全の目が笑っていない。
「…私もユイのこと知りたいな」
「いいよねユイ?」
「…いいよ」
アカリのプレッシャーに、ユイは頷くしか出来なかった。
ユイは優等生と言うべき人間だ。
品行方正、成績優秀、人間関係も文句無し。
学級委員を務め、学内の評価は「真面目の擬人化」である。
まあこれは学内の評価でしかない。
本当のユイ。学外の彼女は…
「…スッゲーッ!よく分からないけどアイテムがいっぱいだぁ!」
「ちょっとヒバナぁ!」
ヒバナとアカリの二人は、ユイの家に乱入していた。
「これ変身ベルト?こっちは…なんだこれ?」
「こっちは魔法少女系の奴だよ!これは光の国の巨人の!女児向けから男児向けまで幅広い!」
「……」
ユイは顔を真っ赤にし黙ってしまった。
『いや~いつ見ても素晴らしい揃えぐわいだね~流石オタク』
「Dr.モフルぅ!」
ユイは神出鬼没のぬいぐるみの首を絞める。
『精密機器ぃ~!』
「何でこの二人を私の部屋に!」
『だって~…アキラが魔法少女同士仲良くした方が良いって言うから~』
「だからって…!」
ユイは手を放し、騒いでいる二人に視線を戻す。
「すごいオタクなんだユイって!こんなに揃ってたら博物館だよ!」
「…まあ、私が誇れるものはこれぐらいしか…」
「そんなことはない!」
ヒバナは目をキラキラさせながらユイの腕を握る。
「!」
「正直特撮とかはよく分からないけど私も同じように趣味があるから分かる!ここまで何かに全力に成れるのは素晴らしい事だ!」
「…そこまで言われると照れる――ひっ!」
ユイは目を合わすのが恥ずかしくなり目線を逸らしたが、そこに恐ろしい目をしたアカリの視線が突き刺さる。
「……」
(あの目だ!間違いない…養豚場の豚を見る目だ!)
『ゴホン!まあこれで親交を深めれたな!ヨシ!』
「これを見てそう思うなら眼科にでも行った方が良いぞ」
深夜、金田が運転する車が山道を走る。
「…くそ…こうも暗かったらこの道は地獄だ…くそ…」
街頭も無い蛇のようにうねっている峠。走り屋ならともかく、一般人の金田はキレながら車を操縦をする。
「何でこんなところに出やがるんだ死ね…消えろ…失せろ…道路封鎖してるから対面車が来ないのは助かるが…やっぱ死ね…」
普段の紳士的な態度はどこへやら、ひたすら罵声を続ける。
「まあ落ち着いてください金田さん」
「それで小林さんは何故いるんです!」
後ろの席にはヒバナとユイだけでなく、何故かアカリまでいた。
「細かいことは気にしないでくださいよ。それに苗字じゃなく名前で呼んでくださいよ、距離を感じます」
「…あーはいアカリちゃん…じゃなくて!」
「そんなに興奮しないでください」
「…チッ」
「ナチュラルに舌打ちした」
金田は必死の形相で車を運転し、どうにか目的地手前まで来ることが出来た。
「…はあ~」
金田はクソでか溜め息をつく。
「…ここからは私達の出番ですね」
ユイは扉を開け、外に出る。
「…ああ、がんばってくれ…ふう…指示はこちらから…はあ…だすから…ひい…」
「了解です…無理はしないでくださいね」
「わかって…ふう…」
ヒバナもそれに続き、外に出る。
金田は息を整えながら、ノートパソコンを取り出し開く。
「何か手伝えることは無いですか?」
「はっきり言って帰ってくれるのが一番いい」
「こんな暗かったら帰れませんよ。それにワンマンは大変ですよね?手伝えることがあったら言ってくださいよ」
「別にな…いや、これやってくれるか?」
金田はもう一台パソコンを取り出す。
「ここに出るデータを指示通りにこっちに打ち込んでくれ」
「いいですが、なんですか、これ?」
「虚影は感情エネルギーの集合体だろ、だからエネルギーの動きを読み解けば虚影の発生や動きを予想できる。そのためのデータ精査って所かな」
「りょーかいです」
アカリはキーボードを高速で叩き始める。
「…なんか早くない?」
「まあ、私の特技ですから」
アカリの圧倒的な手さばきに、金田はため息をついた。
「…なんか僕だけ常人すぎて周りに付いてけないな…」
その瞬間、パソコンから警告が発せられる。
「!!」
「…これまでにない高エネルギー反応!?クソ!まだ二話だっていうのに何でこんな時に!…ユイちゃんヒバナちゃん聞こえてるな!警戒しろ!そろそろ出現するはずだ!」
「…これまでにない強敵…」
ユイは警戒感を強め、周囲を見渡す。
深夜の峠道。
車で通ることはあっても徒歩で来ることは無い。
昼間には通っても深夜には通らない。
何とも言えないシチュエーションに、若干テンションが上がる。
「まあ心配しなさんな」
ヒバナはユイの肩に手を置く。
「この私が吹き飛ばしてやる」
「…だから不安なんだけど…」
ピキーン
ヒバナに電流走る。
「なんだ!?」
「虚影が来るんだっ!変身!」
ユイは変身する。
「来るのが分かったのか…まさか私エスパーにでも…!」
『変身ネックレス(略)を身に着けたら至近距離のエネルギー反応が云々で分かるようになってるんだ!それより早く戦闘準備!』
「了解金田さん!変身!」
ヒバナは光に包まれ、黒い服装に一瞬で変わる。
「…やっぱ派手過ぎるよね…戦うのにこのデザインは…」
『デザイナーの方に言ってくれ…む、エネルギー増大!来るぞ!』
通信越しに金田が声を上げた直後、どこからともなく黒いモヤが現れ、形を作っていく。
だが前見たモノと違う。モヤが形を真似たようなものではなく、解像度が高くしっかり現実感を放っている。
「…こいつ…まさか…」
そしてその形はあまりにも巨大かつ、見たことがあるものだった。
「戦車!?」
戦車…それが今回の敵だった。
『戦車だと!?』
「戦車ですよタンク!!」
戦車の巨体に圧倒され、ユイは立ちすくんでいた。だが――
「…戦車が何だ!吹き飛ばしてやる!これが私の魔法だ!」
「それ魔法って言えるの!?」
ヒバナはアサルトライフルを生み出し、臆せず戦車に向けて発射するが――
無情にも弾かれてしまった。
「クッ!流石に戦車相手は無理だったか…だったら!」
ヒバナはアサルトライフルを手放すと、巨大な筒を生み出す。
「戦車には対戦車ミサイルだ!当たるといてーぞ!」
巨大な穴から放たれたミサイルは、曲線を絵描きながら戦車に直撃する。
大爆発が起こり、爆風が空間を支配する。
「あっつぅ!ゴホ!ゴホッ!…ちょっとヒバナ危ない!こんな至近距離で爆発物は!」
「倒せたんだしこのぐらい…」
まあお察しだろうが、消えていった爆炎の中からピンピンしている戦車が現れた。
「…直撃だぞ!?なんて頑丈さだ!」
「ヒバナ!危ない!」
ユイはヒバナの前に出て、ステッキからビームを放つ。
だが、ミサイルが効かない相手に通用するものでは無かった。
戦車は砲身を二人に向け、砲弾を放つ。
「!?」
砲弾はギリギリ寸前でユイに直撃せず――
ドカーーーン
山の向こう側が大爆発をおこす。
「はう!?」
「何て破壊力!?」
戦車は砲身をゆっくりより正確に二人に向ける。
「……」
「……」
二人は顔を見合わせる。
「「逃げるんだよ~!」」
二人は全力で逃げ出した。
「はあ、はあ、はあ」
「ふう…ここまでくれば少しは…」
二人は峠道を逃げ、どうにか距離を取ることが出来た。
複雑な道だ。追跡は難しいだろう。
「…なんて頑丈な奴…だがこんな狭い山道で戦車などバカだな!戦車は広いフィールドでこそ真価を発揮する兵器だ!…これは勝ったも同然だな!ガハハ!」
ヒバナは自信満々に声を上げる。
「けどどうやって倒すの?」
「そりゃ対戦車ミサイルで――」
「さっき見事に効果なかったじゃん」
「地雷…」
「ミサイルより火力高いの?」
「それならこっちも戦車を!」
「…そこまで複雑なモノ作れるの?」
「じゃーどないせいっつーねん!!」
ヒバナは大きな声で叫んだ。
「っつーねん…」「つーねん…」「ーねん…」「ん…」
山肌に反響する。
『もしもし聞こえてるか?』
「金田さん?なんですかあのインチキタンク!いつものモヤもどきより解像度高いし!」
『多分特殊個体だ!いつもの奴より強力なタイプだ!』
「そんなのあるんですか!?なんで教えてくれなかったんですか!」
『最近全く出てなかったから警戒してなかったんだよすまん!だがあのインチキな硬さの理屈は分かった。バリアだよ。滅茶苦茶頑丈な』
「バリア?」
ヒバナは素っ頓狂な声をだす。
『ああ、恐らく高いエネルギーを使用し空間を捻じ曲げてる。理論上はより強いエネルギーをぶつければ正面突破は可能だが…残念ながら今の我々では不可能だろう。バリアを避けて攻撃するしかない』
ユイは手を叩く。
「つまり、この距離ならバリアは張れないな!ってことですか!」
『いや、普通にバリアに弾かれるなそれは』
「情報を出すんだったら解決策も出してくださいよ!」
金田は少し黙った後、口を開く。
『さっきアカリちゃんが気づいたんだが、砲弾を発射する瞬間にエネルギーの動きが…まあつまり発射する瞬間に砲身のバリアを消してるって事だろう。一方的に撃てるチートバリアって訳では無いようだ』
ヒバナは笑顔を浮かべる。
「つまりドーンて撃ったところにズドンと撃ち込めばいいのか!」
『…そういうこった』
「行くぞ!GO!」
ヒバナとユイは戦車の上側に回り込み、奇襲をかけることにした。
ユイは戦車に向かい飛び降りる。
「戦車の弱点!それは上空だ!」
作戦はこうである。
ユイが降りる→戦車砲発射→そのタイミングでヒバナが飛び降りて攻撃を撃ち込む
である。単調である。
「…で、私は囮…」
ユイは戦車の前に立ち、全力でバリアを展開する。
(…正直あの火力の前ではこのバリアで防げるかどうか未知数だ…けど!)
「さあ来い!」
だが戦車は自分の弱点を知っているようだ。大砲ではなく、体当たりを仕掛けてきた。
「なに!?」
圧倒的な質力攻撃である。
ユイはバリアで衝撃を受け流そうとするが、盛大に吹き飛ぶ。
「きゃっ!」
「ユイ!」
ヒバナは飛び出し、吹き飛ばされたユイを受け止めようとする。
が、重たい衝撃は二人を吹き飛ばし、ガードレールを突き破り崖から落とす。
「うわぁ!」
「クソぉ!!」
ヒバナは腕を伸ばし掴み、何とか落ちるのを防ぐ。
「助かった…ありがとうヒバナ」
「感謝するのは早い…」
戦車は止めを刺そうとか、崖に掴まっている二人に近づく。
「どうしようヒバナ!?」
隣で同じように崖に掴まっているユイは叫ぶ。
(どうする?愚直に前に出ても勝てる相手でも状況でもない…)
「金田さん!何か無いですか!?」
『…自分の思う最強の攻撃をしてみるしかないだろう。イメージしてみろ、確実に相手を倒せる必殺技を』
「確実に相手を…?」
ヒバナは自分の頭をフル稼働させる。
「必殺…」
ヒバナはとあるアニメにたどり着いた。
銃に興味を持ち始めた時期に見た、昔のSFロボットアニメ。
だが主人公ロボットに乗らず、手に持っているライフル一丁でロボットに立ち向かう作品だった。
はっきり言ってヒバナにとって現実に無い銃はあまり興味が無い。
だが、それだけは強く印象に残っていた。
人が使うには無駄が多いバカデカい大きさ、旧式で弱い、そして取って付けられたパイルバンカーとかいう合理性皆無の武装。
性格は破天荒だが、武器は堅実さを好む彼女とは真逆の方向性だった。
しかし、彼女の心に残っていた。
主人公が最後まで諦めず、強大な敵に立ち向かっていく姿を。
「やってみるか…」
ヒバナは全力でイメージする。
正直記憶はあやふやだったため形は現実にある対物ライフルに似ているが、下に着けられたパイルバンカーと合わせるとは中々味がするデザインだ。
「行ける?」
「ああ、やってやんよ!」
『奴のエネルギーの動きがかなり活発だ!最大火力で砲撃をかけるつもりのようだ!アカリちゃん!』
金田の声が響く。
『分かってます!残り20秒、19、18…想像以上に速い11秒!』
ヒバナは息を呑む。
「…つまり奴が撃つタイミングで飛び出してカウンターって事か…」
『…10…9…8…7…6…』
スピーカーを通して聞こえるアカリの声だけが、彼女の心細さを支える。
『5…4…』
「心配しないで、攻撃は私が防ぐ!」
「!!」
ヒバナの肩に手が置かれる。
(…ユイ)
頼れる相棒の存在を再認識し、ヒバナは持っているライフルの握る力を強める。
『3…2…1…』
『「「ゼロッ!」」』
二人は一気に飛び出す。
「食らえーっ!」
砲弾を通すために開けたバリアの隙間。その良くて数十センチの隙間に、ヒバナはライフルを発砲する。
ライフルの弾は戦車に直撃し、爆発を起こす。
「やった!」
だが戦車はまだ動く。狙いを修正し、ヒバナに向かい大砲を撃つ。
「!!」
「ヒバナはやらせない!私が守る!」
ユイがヒバナの前に出、砲弾を受け止める。
「うわぁぁぁぁぁ!」
「ユイぃ!」
ユイはバリアで防いだが直撃コース。すさまじい破壊力を殺しきれず吹き飛ばされる。
「!!」
だがヒバナは振り返らない。ライフルを戦車に突き立てる。
戦車は素早くバリアを展開していた。
だがヒバナはトリガーを引き、爆薬を爆発させる。
爆発のパワーは、戦車に杭を打ち付ける。
「ああああああああ!」
ヒバナの鬼気迫る勢いを前に、戦車は驚いてしまったのだろうか。大砲を発砲しようと――
「――ッ今だっ!」
ヒバナはライフルを発射寸前の大砲に向け、発砲する。
「…い…大丈夫!?大丈夫ユイ!?」
ユイは重たい瞼を開ける。
「ユイ!…気が付いた!?」
「…うん」
ユイは痛む体を起こし、周りを確認する。
どうやら戦車砲の衝撃で山中に吹き飛ばされてしまったようだ。
「…骨折とか…してない!?…凄いな魔法少女…」
「そう…」
腰を下ろしていたヒバナは立ち上がり、ユイに手を差し伸べる。
「立てる?」
「…うん、大丈夫」
ユイはその手を取る。
「戦車は?」
「私がばっちり倒したさ!けど盛大に爆発して私も吹き飛ばされちゃって…あ、もちろん金田さんが撃破したの確認したよ!」
「それならよかった」
「…それでさユイ」
「何?」
「さっき、ありがとう。助かったよ」
ヒバナは少し照れながらも感謝を伝える。
「…フフフっ」
その様子におかしく思い、ユイは笑い出す。
「何が可笑しい!」
「ハハハっ!…別にバカにしているつもりじゃないよ…ただ」
「ただ、何だ?」
ユイは満面の笑みになる。
「たださ、ヒバナってとってもかわいいんだなって!」
「はうっ!?」
「アカリちゃんは少し待っててくれ」
金田は扉を開け、車の外に出る。
「…来たな」
暗闇から、少女達が現れる。
「お疲れ様です、アキラさま」
「いや、僕は大したことはしてないよ。ていうかこれから君たちの出番だよ」
「はい。これよりロボ六号、ロボ七号、ロボ十一号、ロボ十三号、ロボ十四号は証拠隠滅作業に移ります」
「よろしく頼むよ」
金田に一礼した後、少女達は戦車との戦闘が行われた場所に向かう。
「…なんで少女型にしたのかな?…いや、気持ちは分かるけど」
金田は少女達を見送り、車で待っているアカリの元に戻ろうとしようとしたタイミングだった。
「こんばんは、金田アキラさん」
「!?」
後ろからかけられた女性の声に、金田は振り返る。
女性は一言で表すなら「綺麗な大人」。だが、あまりにも生気を感じない。
「…貴様…人間か?」
金田は懐から拳銃を取り出しながら、声を投げつける。
「分かっちゃうの?凄いのね魔法少女の上司さんは」
「…質問に答えてもらおうか」
「そうキリキリしないで。せっかく場を和ませようとしたのに」
女の雰囲気は、どうも掴むことが出来ない。
「私は虚影」
「完全人型の虚影だと言うのか?」
警戒度MAXの金田の瞳を観察し、女は不気味に笑う。
「…分かってるくせに。私が人間でもあるってことも」
女の対応に、金田は確信した。
「…虚影に飲み込まれたって奴か?」
「大正解」
「ッ!」
金田は、手に持っている拳銃の狙いを付ける。
「……」
だが、女は銃を突き付けられても全く動揺しない。
「…私レベルになると銃なんておもちゃ以下…それに」
女の瞳が怪しく光る。
「あなた、手が震えてるじゃない。銃、撃ちたくないの?」
「!!」
金田は自分の震えてる指を確認し、久々の死の恐怖を感じた。
「大丈夫…そう怯えないで。今日はただ挨拶に来ただけなの」
「…あいさつぅ?はっ、これから手を取り合って仲良くしましょなんて言うつもりか?」
金田の背筋に、大量の汗が流れる。
「まさか…それで…Dr.モフルさんは今日は居ないのかしら?」
「…残念ながら寝てるよ。ここ数日無理に徹夜をしたからな」
「それは残念。会って話がしたかったんだけどね」
「……」
金田は軽く息を吸う。
(…クールになれ。女子高生戦わせてんだぞ!勝ち目がないからって――)
「金田さん伏せて!」
「!!」
光線が二人の間を切り裂く。
「ユイちゃん!?」
「おや」
「まだまだぁ!」
現れたユイ、そしてその後ろからヒバナが飛び出す。
ヒバナは手に持ったサブマシンガンを斉射する。
弾丸は女を貫いた――はずだった。
「…うふふ」
「ッ後ろ!?」
ヒバナは振り返り再び引き金を引く。だが、
「うふふ」
「うふふふふ」
「うふふふふ」
「…分…身?」
女は自分達を取り囲める数に増えた。
「多分幻だろうが…この数では…!?」
三人は身構えた。激突を予感させる空気だったが、女は一人に戻る。
「言ったでしょ。今日は挨拶に来たって」
「……」
ヒバナは無言で銃を構える。
「自己紹介がまだったね…私は四天王の一人、ディスパー」
「ディ…ディスカッター!?」
「ディスパーね」
女…ディスパーはヒバナとユイを指さす。
「すごいわねあなた達。戦車を倒しちゃうなんて。あれ一応、私のとっておきだったのに」
「…お褒め預かり光栄だね…じゃあ!」
ヒバナはトリガーを引く。
「えちょ!?」
ガガガガガガガガガガガガ
「待ってヒバナちゃん!会話中!」
「知るかあんな奴ぅ!消し飛べ!」
「な、なにするのよ!?」
「…効かない!?なら!」
ヒバナはサブマシンガンを手放し、また別の武器を創造する。
「食らえ!説明書を読んだら撃てるロケットランチャー!」
四本穴があるロケットランチャーだ。
「消し飛べヤァ!!」
ディスパーにロケット弾が炸裂し、大爆発が起こる。
「ちょっと金田さんが居るーっ!」
直撃。汚い花火となって吹き飛んだかに思われたが、流石は幹部。煙と爆炎の中からディスパーが現れる。
「チッ!まだ耐えるか!じゃ次は…」
「ちょっとタンマ!これ以上は死ぬ!顔見せ回で死んじゃう!」
「そうか…じゃあ死ねよやーっ!」
「こ、これで勝ったと思うなよぉ!覚えてなさーい!!」
ディスパーは逃げ出した。
「ディスパーか…いったい何者なんだ…!」
「「…はあ」」
ユイと金田はシンクロため息をついた。
「まあいい…次あった時私がロケランでインド王を渡してやる!…けど…」
(…あの顔…どこかで見たことがあるような…?)
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