第五話 天使日記
「日記か」
「この日記には私のことを書いてるの」
「遥春のこと?」
「うん」
「ねえ、ほんとに私の
「まあ、気になるし」
「ほんとに?」
この日記に遥春が死んだ理由が書いてるのか
もしそのその理由を知ってしまったら・・いや
それでも
「知りたい、
「・・わかった」
そういうと、遥春は俺に日記をめくって見せた。
でもそこに書いてあったのは壮絶な、過酷で、救いようもないことだった。
現在 2021年 2月4日
日記
2009年 4月1日 「きょうはにゅうがくしきなのになんでぱぱこなかったの」
2011年 9月9日 「明日はうん動会なのにまたパパとママがけんかしてる、またうん動会きてくれないの
かなパパ」
2015年 8月6日 「パパが私をおそおうとしてきた、怖いよ・・」
8月8日 「パパとママ離婚しちゃった。これからどうなるのかな」
2016年 4月9日 「今日は中学の入学式だ。いい友達作れるかな。」
4月20日「今日も机に悪口を書かれる、私何もしてないのに」
2017年 12月25日 「ママが私を置いて出て行った、私 もう 嫌だよ」
12月28日 「親戚も祖父母も私を引き取るのを嫌がった、まあいっかもう」
2018年 2月4日 「今日は私の誕生日、私の人生にプレゼントなんて一つもなかったよ、もう死のう でもどうせなら私が生きてたって証を残そう そうだ 屋上で・・」
俺は最後の言葉を読むのをやめた いや、読めなかったというのが正しいだろう。
なぜなら 目の前が涙で遮られていたから
「屋上で私が死ぬ直前あなたが見ていた、 あれはほんとにたまたまだったよ。」
「ごめん、ごめん」
なぜだろう
「?何であなたが謝るの?」
この感情はなんだ、そうだ 同情だ
それでも
「ごめん、謝ることしかできなくて、理解できなくて」
震える声で言う
「泣かないで、あなたのことじゃないでしょ」
「おまえ、辛かったはずなのに何もできなくてごめん」
「同じ学校にいたはずなのに、何もできなくて」
「それをいうなら他の生徒たちも同じだよ」
「だから大丈夫。」
遥春の方が辛いはずなのに 俺が慰められてしまっている
そのことにですら謝りたかった
「でも、私はこうして天使になって戻ってきた」
「これはきっと神様からのプレゼントなんだと思う」
・・・・ひとしきり泣いた 泣きすぎて目がむくんでいた
俺は決心する 今俺が遥春にできること
俺はもう遥春のことを知ってしまったから
「もう一つ新しい日記ないか?」
「ノートでもいい」
「?あるけど、どうするの?」
遥春は疑問そうな顔をした
「はい」
遥春は新しい日記を俺に手渡す
「で、その日記に何するの?君が日記を書くの?」
「いや、これは遥春が書くんだ」
「え〜めんどくさいなあ」
「てか何書くの?書くことなんてないよ」
言うんだ 云うんだ
「俺と一緒に思い出を作ろう!未練なんてこれっぽっちも残らないくらい!」
「一緒に出掛けて、美味しいもの食べてさ、笑って、泣いて、楽しむんだ。」
「ちょ、ちょっと待って急すぎて理解が追いつかない。」
遥春は動揺していた 困惑していた 驚いていた でも
ちょっと顔が赤くなって嬉しそうにも見えた
「これから二人で本当の"思い出"を作ろう」
遥春は 泣いていた
俺は遥春に嫌なことを言ってしまったかと思い謝ろうとした
でも違った
「あ、ごめ」
俺が謝るまえに遥春は言う
「私、嬉しいんだ 今までこんなこと言われたことなかったから」
「同情かもしれないけど、それでも今までそんなこと誰も言ってくれなかったから」
俺はまた泣きそうになる目を堪えた
・・・・・
「日記にタイトルをつけよう」
「名前?」
涙ぐんだ声で遥春はいう
「忘れないように、もう誰も忘れないように」
「日記のタイトルは・・」
天使日記
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