第9話 How to Respond to a Runaway Truck?

【グローリーヒルズ公園内】


 匡佐を引っ張っていると、


「ちょいちょいっ! やることって避難誘導のときの人の動線の見極め?」

「そうだ。お前の脳みそを有効活用させてもらう」

「だったらさっ! 避難誘導じゃなくてトラックの動き方を僕は調べたいね。対処方法を考えられるかも」


 そう言われて、匡佐をポイっと解放してやった。

 そのまま歩いて話す。


「タイムリミットは数分だぞ?」

「追跡中の人に状況を教えてもらえれば大方可能だね。あとは、ブラウン捜査官にトラックの現在地と予測進路を端末にポイントしてもらうだけ! そもそも追跡してるパトカーがいるかが問題だけど」

「そうかい」

「あとなんで公園に来るってわかるのさ?」

「分からん。それは警部に聞こう」

「もうテントに行っちゃったよ警部」

「じゃあ走るぞ!」


 そう言うや否や全速力で走り出す。

 その勢いのまま垂れ幕を手で払いのけ、テントの中に飛びこんだ。


 中に入ると、警部は事の経緯を主任とアルバートの二人に説明している所だった。


「―――了解しました。人数的に避難誘導の指揮は州警察にお任せします。FBIはトラックの対処の方がいいかもしれません」

「探偵さんには避難を手伝ってもらうつもりだったが、それもそうだな。そっちは任せるよ」

タスクフォース合同捜査体制で相互運用チャンネルに乗せるより、直接聞いた方が早い。そちらの警察無線をお借りしても? トラックの現在地を逐一確認し対応に当たりたいのですが」

「僕としても、その方がやりやすいかと」

「好きに使ってくれ。じゃあウィルキンズ主任、そっちは任せたぞ!」

「あー警部!」


 出ていきそうになった所を慌てて呼び止める。


「なんだ!?」

「追跡班の台数とトラックの車種、スピードは!」

「地元警察5台が追跡中、大型トラックだが車種は知らん! 速度は直接聞いてくれ、ほらよ!」

「っ!」


 警部が机に置いてあった二台の無線機を手に取ると、そのまま“ズザーッ!”とこっちに滑らせてきた。


「それじゃ!」


 こちらがキャッチするのを、警部は無線に話しかけながら“ダッ!”とテントを飛び出していった。

 パシッと無線機を手に取り、電源を入れてそのまま片方を匡佐へ。

 無線のチャンネルは既に合わせられていたようで、通信がすぐに聞こえてきた。


「はいよ――」

――『Dispatch指令室、こちらUnit 77。対象車両視認、追跡開始』

――『Unit 77、詳細送れ』

「おーやってんねえ」

――『大型トラック一台、白色、ナンバー不明。ルート17北行き、右車線―――』

「それで匡佐。やりたいのは、お前が指揮官で俺が実働隊(一人)ってことだよな? そっちは任せるから俺はもう行くぞ」

「わかった」

――『……速度約40マイル、信号無視を確認。停止命令を無視―――』

 まだ鳴り続ける無線機を腰に差して外に出ようとした、その時。


「アラン」


 主任に呼び止められた。


「はい?」

「これも持っていけ」


 主任から手渡しでもう一つ、別の無線機をもらった。イヤホン型でSPとかが片耳に装着するアレである。


「こっちは内線用だ。外部には流れない。トラックの対処は警察無線でも行うが、匡佐探偵を含むこちらと君との交信はこれで行う」

「了解。それでは」

「「いってらー」」


 左耳に無線を嵌めて、テントの外に向かう。


「それじゃあアルバート捜査官。早速だけど、無線で聞きながらトラックの位置を端末マップにポイントしてほしい。リアルタイムで頼むよ」

「分かりました。本職ですからね、お任せあれ―――」


 テントを出てすぐに走り出し、元来た道を通って車まで急いだ。

 歩いて一分という、近いと言うには微妙な距離が今は致命的である。

 全速力で走る中、追跡班と匡佐たちが交信を始めた。

 時々その内容も聞こえてくるが、いまは構わず走る。


 道を抜けて公園を出ると、中々に慌ただしい状況が見えた。


 マスコミたちの避難誘導をする警官、一向に動かないどこかの局の中継車、雑多な機材を抱えて走るマスコミやジャーナリストたち。そして、この現場をもカメラに収めようとする報道陣などなど。

 人数が多い上にカメラなどの大量の機材もあるため、避難の進みは遅い様子だった。


 この中で警察はパトカーを動かし、道路をふさいでバリケードを構築していた。


 そんな彼らを横目に走り、自分の車へと向かう。途中で警部補たちとも会い一言二言説明して別れた。


――『管内の全郡部署へ、これより州警察C中隊が指揮を執る。』


 州警察も追跡に合流したらしい。


――『10-4了解、後方につく。』


 ちょっとは時間稼ぎになってほしい。

 といったところで丁度車に到着。鍵を開けて中に入ると急いで装備の点検を開始した。はじめに拳銃を抜いたその時、左耳から匡佐の声が聞こえてきた。


『あーあー、聞こえる?』

「聞こえるぞ、要件は?」


 会話と並行して、スライドを少し引き薬室を確認、ホルスターに戻す。

 今度はアルバートが話してきた。


『トラックの現在地だ。まだ街の方にいるけど、どうも真っ直ぐこっちに向かってるっぽいし確定で公園に来るね。トラックの進行方向は、僕らが車で通ったのと反対側で、公園直前で道路が曲線になってる。このままの速度で来たら避難が間に合わなくて、公園に突っ込むかも』

「マジかよ」


 話しながら防弾チョッキを装備。


『とはいえ公園内じゃなくて、駐車場か芝生に入ってくるだけだ。でも、それだと駐車場に避難はダメになるけど。無線で言ってたけど、車種はフレイトライナーに酷似、今は一貫して主要道路を直進してる。あと一応車線は維持してるらしい。パトカーが前に出ようとすると蛇行するみたい。』


 ――意思があるのかよ。難儀なトラックだな。


「トラックのETA到着予定時間は?」


 予備のマガジンはポケットに詰めた。


『このまま行くと6分だね』

「ちょっっっとマズいかも!」


 具体的な数字を聞くと焦りが募るぞ。

 手は止めずに会話を続けていく。


 空港で確認してるが、改めて手早く車内の物資や装備を漁ってみた。

 あるのはスコップ、盾、救急キット、AR-15? スパイクベルトは警察が持ってるはずだしそれは使えるな。

 お次は匡佐が喋った。


『間に合うかい?』 

「どうだか。お前がトラックを止めるアイデアをくれるなら、たぶん」


 今は使えそうにない物ばかり。少なくとも出番じゃない。


『止めるの無理だね。月並みだけど、止めるんじゃなくタイヤを滑らせてコースアウトとか。』

「なるほど。考えてみる」


 できるかはともかく進路を逸らすのが一番現実的か。でも道具がない。何か方法を考えなくては。

 何か、何か他に使えるものは無いのか……? AR-15なんて運転手が武装してない限りまず使わないし……警察のスパイクベルト使うしかないか……。


『今のでいいの?』

「悪いが元より期待はしてなかった」

『酷い!? ……ちょい待ち、即席だけどこの案はどうだろう』

「手短に頼む」

『要するに、右車線を潰して、トラックを左側へ逃がす。そして逃がした先で減速させればいい。止まる場所に誘導してやるんだよ。』

「なるほど詳しく」

『公園直前にあるカーブ手前で右車線を潰し、トラックを左車線へ。あとは自然に曲がらせた後、トラックが体勢を立て直す所でスパイクベルトを使う。動きが直線的になりやすいそこで仕留めるように。』

「―――大体わかった」

『トラックの動きを見るに、一車線を塞げばほぼ必ず回避するはず。それを利用してやるんだ。』

「はいよ。それじゃあ引き続き匡佐が動線、アルバートが地図の方を。役割分担して続報してくれ」

『オッケー!』


 ヨシッ! これで何とかなれ!

 警部に作戦を伝えるために、あと作戦の許可も貰うために、腰に差した無線機を手に取って口元まで持ってきた。

 送信ボタンを押し、 “カッ”という音が鳴った。


「トンプソン、こちらアラン。トラック対処の提案あり、優先度高。応答願う。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

迷探偵の夏休み返上出張録 ~アメリカ合衆国連続断頭殺人事件~ 真夏ノ蒼空 @Kasute_ra

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画