第2話 笑窟?なんだそれ・・・。

俺たちは、盗賊が去った方向へ向かって歩きだした。

そういえばこの女信者の名前を俺は知らない

聞いた方がいいのだろうか?

聞いて普通に答えてくれる気がしない

「あの~、君の名前を俺は知らないんだけど・・・」

俺は勇気を振り絞って声をかけた。

「え?私ですか?レイスって言います!

魔王様に名前を覚えられて光栄です!!」

なんか勝手に感動しているんだけどまあいっか

俺の名前は・・・、って言ったところでどうせ魔王様って呼ばれるんだろうから

やめておくか。

少し歩いたところで先の方で明かりが見えた。

「あれは・・・アジトか?」

「んーーー、なんかぁ違うみたいですよ?」

松明を持った傭兵の様な格好をした女性が、洞窟の入り口で立っていた。

「あれはぁダンジョンですねえ」

「ダンジョン?」

よくRPG(ロールプレイングゲーム)に出てくるあれか?

「この世界でダンジョンが作れるのは魔王様だけです

なのであれは前魔王様がお作りになられたものではないでしょうか?」

「なんのために作ったんだ?」

「それは、世界を支配するためではないでしょうか!」

君に聞いた俺がバカだった。

「あーでもでも、最奥には宝箱があるとか聞いたことがあります!

お宝財宝ざっくざっくではないですかね!」

よくある宝箱が配置されていて珍しいものが入っているパターンか

しかし、なんで盗賊がここに向かったのか不思議でならない

逃げるならアジトか、村とかに逃げるはずなんだが

盗賊もこのダンジョンのお宝狙いだったのかもしれない

「俺たちも近くに行って見てみよう、盗賊の気配は無さそうだし」

「お宝あるといいですね~♪」

ダンジョンに潜る気満々なんだが

俺たちはダンジョンの近くまで行くことにした。

「おい、君たち!」

「はい、なんでしょう?」

「ここは、ダンジョンの入り口だ。危険だから近寄らないほうがいいぞ

最近見つかったダンジョンなんだがどうやら中には危険な瘴気であふれているらしい

私は、ここに人が入らないように見張っている」

「俺たちは旅の者です」

「旅の者か・・・、裸で旅ができるのか?」

「これは道中に身ぐるみをはがされまして」

「こいつらにか?」

傭兵の指さした方を見ると裸の盗賊が数人横たわっていた。

「あ、こいつら・・・ですね」

「いきなり裸で襲い掛かってきたから叩きのめしたんだが、

君はわかるが何故こいつらも裸なんだ?」

「えーと、話せば長くなるんですが」

俺は簡単に手短に重要な部分を省いて話した。

「なるほど、裸の盗賊が服を細切れにして立ち去ったと

そして、君たちはこの盗賊を追って来たと」

「魔王様に恐れをなして逃げたのです!」

「魔王?」

「ち、違いますよ!マオーです

俺の名前がマオでこの子がマオー様って呼ぶんですよ」

「そうか、魔王なんて軽はずみに出すものじゃないぞ」

「紛らわしい名前なんでよく間違われるんですよ~、はっはっは~」

「お前も大変だな」

なんか憐みの眼で見てきたんですけど

「ん?」

ダンジョンの奥から人の気配がした。

「戻ってきたか・・・」

「ゴホッゲホッ」

「ひーっひっひっひっ」

「ふはっはっは」

なんか笑ってないか?

ダンジョンの奥からできてきた冒険者は皆笑いながらお腹をかかえ

涙を流しながらでてきた。

「なんで皆笑っているんですか?」

「それはこの洞窟の瘴気が笑いの瘴気・・・言い換えれば笑気だからだ」

「それは何かのジョークですか?」

「ジョーク?というものは知らんが冗談を言っているわけではない

この洞窟の名も笑気の洞窟で笑窟と呼ばれている」

「そんな洞窟は聞いたこともないけどある意味恐ろしい洞窟だ」

「一度入れば笑気に侵され笑い死ぬ者もいると言われている」

「笑いながら死ねるなんて幸せじゃないですか」

「幸せなもんか、みんな苦しみの表情で死んでいっているんだぞ」

ああ、お腹が痛くて呼吸もできずに苦しんで死ぬのか

誰だよ笑いながら死ねたら幸せだの本望だのいったやつは

出てきた冒険者は皆苦しみの表情をしながら気絶をしていた。

だから誰も踏破できないのか

俺ならワンチャンいけるんじゃなかろうか?

俺は不老不死だから死ぬことはないだろうが笑い苦しむことはあるだろう

正直笑いを死ぬほど味わったことがないからどんだけ苦しいのかわからん

「俺なら踏破できるかもしれません」

「正気か?」

「はい、俺はどんな笑いにも耐えることができるからです」

正直死なないからってことなんだけど

「うーむ、命の保証はできないぞ?最悪奥にたどり着いたとしても何が待ち受けているかもわからん」

「こう見えて俺強いんです」

「私には弱そうに見えるけどな裸だし」

裸は余計じゃい、カッコよくいく雰囲気台無しじゃないか

まあ、裸でいること自体カッコ悪いけどな

「ハックション!」

虎穴に入らずんば虎子を得ずってな!

「大丈夫か?」

「何か服を貸してください」

「それならこの盗賊の一人が服を着ていたから剥ぐといい」

お言葉に甘えて頂くとしよう。

無いよりはマシだ。

「魔王様!私もお供します!」

「お前はこの笑気に耐えられるのか?」

「魔王様が居れば耐えられます!」

嫌な予感しかしない

「お前は残ってくれ」

「私も行きます!!」

「お前にしかできないことがあると思うんだ」

「私にできることは魔王様のおそばにいることです!」

ダメだ、説得できる自信がない

「しょうがない、何かあったら俺を全力で守るんだぞ?」

「かしこまりました!」

俺たちは笑窟と呼ばれるダンジョンへと足を踏み入れるのだった。





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