【鍾愛】非常にかわいがること。あつく寵愛すること(広辞苑第七版より)
- ★★★ Excellent!!!
本作は、カクヨムの公式自主企画、「カクヨムプライベートコンテスト2025【テーマ:BL(全年齢対象)・ブロマンス】」の参加作品です。
「ブロマンス」という単語に初めて接したのはここカクヨムでしたが、天下の角川がラ抜き言葉を使うのかと本気で勘違いしていたレベルの私にとって、歴史物の大家・四谷氏がこの企画に参加されるということがまず驚きでした。
しかしよく考えれば、「男性同士の親密な関係」は歴史上決して珍しいものではありません。まして史実の隙間を埋める傑作を生み出してきた四谷氏と、行間を読むのが命のBL・ブロマンスなら、相性抜群のはず。
そんな本作で描かれるのは、『平家物語』のエピソード。平経正(有名な敦盛の兄)と仁和寺の覚性法親王の間に生まれた、数奇なる関係が題材です。
幼い経正の才能を見出した覚性は、琵琶を介して師弟関係を築きます。やがて長じた経正は、いかに覚性が自分の才を高く評価してくれていたかを知りますが、歴史のうねり、源平の争乱は、経正を文雅の道にとどめおくことを許しませんでした……。
戦に散った平家の公達の悲劇といえば、経正の弟の敦盛の方が有名かもしれません。しかし兄にも、『平家物語』に書き記されるほどの悲しい物語があるのでした。
そのエピソードを、ブロマンスという視点で捉え直した本作。歴史好きの方はもちろん、「師弟関係」にぐっと来る方にもおすすめできる一作です。