芸術を愛し、芸術に愛された男の悲痛な運命
- ★★★ Excellent!!!
平家物語は様々な有名人が登場しますが、平経正については知りませんでした。
しかしこれ程平家物語の描く諸行無常を体現した平家物語的な人物はいないと思います。
琵琶について突出した才能を持つ主人公と、彼の才能を見出す僧侶覚性との絆はとりわけ胸を打ちます。
「鍾愛」という言葉も初めて知りましたが、その愛はなんと尊いことか。
芸術のために死ねたならまだ幸せだったでしょう。しかし時代は貴族から武士のものへ。彼の生まれと時代が、それを許しませんでした。
芸術に炎のような情熱を持ちながら水のように静かに運命に従う経正の姿に、誰もが涙せずにはいられません。