第二章

「やっぱりさあ、名前からしてかっこいいよねー」

 凜はとろけるような目でうっとりと言う。

「夏輝だよ。輝く夏だよ」

「だからなんだよ。ふつうじゃねえかよ」

「あーんわかってないなあ。それが南って姓と合わさると、ぐっとかっこいいんだよ。

 南の輝く夏だなんて、俳優さんみたいじゃん。もー惚れ直しちゃう」

「おめえ、目がハートになってんぞ」

「ハートでもなんでもなっちゃう。先輩のためならなっちゃうよー」

「けっ」

 付き合っていられないとでも言いたげに、霧亥はコーヒーを飲む。

「やっぱり夏生まれなんだろうなあ」

「まあ、そうだろうな」

「お誕生日とか、聞いたらうざいかなあ。お誕生日プレゼントあげたい」

「いいんじゃね?」

 凜と南先輩の距離がどんどん近くなっていくのを、霧亥は止められないでいる。本当は止めたい。だがそれができない。

「お前の誕生日は六月だろ。名前とは関係ないんだな」

「え? うん。いつも凛としているようにって凛てつけたってお父さんが言ってた」

「凛っていうよりはふにゃだけどな」

「あーんそんなこと言わないで」

 そこまで言って、凜はふと思った。

「そう言えば、霧亥って名前はなんか意味あんの」

「あ?」

「あんまり見かけないよね、霧亥って名前」

 ああ、彼は器を置く。

いのししの年の最後の日に生まれたから、霧亥。霧が濃い夜だったんだとよ」

「へえーなんかロマンチック」

「どこがだよ」

「そういや私たち亥年だね」

「亥の年の女は気が強いって言うぜ」

「そーんなことないよ。ふつうだよ」

「どうだか」

 へへっと意地悪げに笑って、口元を歪める。

「あーなんか考えたでしょ」

「別に」

「言いなさいよー」

「言わねえよ」

「もー」

 もうすぐ八月、川にバーベキューに行く日がやってくる。

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