第6話 新しい始まり
同窓会から一ヶ月が経った。優也とは、週末に会うようにしていた。私が東京に行くこともあれば、優也が地元に来ることもあった。
距離がある分、会える時間が貴重に感じられた。一緒にいられる時間を、大切にしようと思った。
ある週末、優也が地元に来た。私たちは海を見に行った。
「ここ、よく来たよね」
彼が言った。
「うん。デートの定番スポットだった」
二人で笑った。
「五年前と、何が変わったと思う?」
優也が聞いてきた。
「うーん...お互い、大人になったことかな」
「大人?」
「うん。昔は、自分のことばかり考えてた。でも今は、相手のことを考えられるようになった気がする」
優也は頷いた。
「確かに。俺も、五年前は余裕がなかった。自分のキャリアのことで頭がいっぱいで、彩花の気持ちをちゃんと考えられてなかった」
「今は違う?」
「今は違う。彩花のこと、ちゃんと大切にできる自信がある」
彼の言葉が、嬉しかった。
「私も。優也のこと、ちゃんと支えたい」
手を繋いで、波打ち際を歩いた。
「将来のこと、どう考えてる?」
優也が聞いてきた。
「将来?」
「うん。俺たちの、これから」
少し考えて、答えた。
「正直、まだわからない。でも、一緒にいたい。それだけは確かだよ」
「俺も同じ。だから、ゆっくり考えよう。二人のペースで」
優しい言葉だった。五年前の私たちには、この余裕がなかった。
「ありがとう」
そう言うと、優也が笑った。
「何に対して?」
「もう一度、チャンスをくれたこと」
「それは、俺も同じだよ」
夕日が海に沈んでいく。美しい光景だった。
「もう一度だけ伝えたいこと、伝えられてよかった」
私がそう言うと、優也が私を見た。
「これからは、毎日伝えよう。ごめんねも、ありがとうも」
「うん。そうしよう」
私たちは、新しい関係を築き始めた。五年前とは違う、大人の関係。お互いを思いやり、尊重し合える関係。
きっと、これからも色々なことがある。すれ違うこともあるかもしれない。でも、もう大丈夫。ちゃんと話し合える。伝えたいことを、伝えられる。
それが、五年間で学んだことだった。
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