第4話 再会の夜
同窓会は、大学近くの居酒屋で開かれた。久しぶりに会う友達と話していると、学生時代に戻った気がした。
でも、心のどこかで、優也の姿を探していた。
「来てないのかな」
そう思った瞬間、入口のドアが開いて、彼が入ってきた。
五年ぶりの優也は、少し大人っぽくなっていた。スーツ姿が似合っていて、学生の頃より落ち着いた雰囲気だった。
彼も私に気づいた。目が合った瞬間、時間が止まった気がした。
「久しぶり」
彼が先に声をかけてきた。
「久しぶり。元気だった?」
「まあまあ。彩花は?」
「私も、まあまあ」
ぎこちない会話だった。昔は、こんなに言葉が出てこないことなんてなかったのに。
宴会が始まって、みんなで近況報告をした。優也は東京で広告代理店に勤めているという。忙しいけれど、充実しているらしい。
私も、市役所での仕事について話した。
「地元に戻ったんだね」
優也が言った。
「うん。あの時、言ってた通り」
少しだけ、気まずい空気が流れた。
宴会が中盤に差し掛かった頃、私はトイレに立った。戻ってくる途中、廊下で優也と鉢合わせた。
「あ...」
「ちょっと、話せる?」
彼がそう言って、外に出ようと誘った。
居酒屋の前の小さな公園に、私たちは並んで座った。六月の夜は少し肌寒くて、でも、心地よかった。
「元気そうで、良かった」
優也が言った。
「うん。優也も」
沈黙が流れた。でも、不思議と嫌な沈黙じゃなかった。
「あの時のこと、覚えてる?」
彼が聞いてきた。
「うん。忘れられるわけない」
「俺も。ずっと、後悔してた」
その言葉に、私は彼を見た。
「後悔?」
「うん。もっと、ちゃんと話せばよかったって。感情的にならずに、冷静に話し合えばよかったって」
彼の言葉を聞いて、涙が出そうになった。
「私も、ずっと後悔してた」
声が震えた。
「あの時、私が悪かった。もっと、優也の気持ちを考えるべきだった。東京で頑張りたいって言ってたのに、自分のことばかり考えて」
優也は首を横に振った。
「彩花が悪いわけじゃない。俺も、君の気持ちをちゃんと理解しようとしてなかった」
私たちは、五年越しの謝罪をした。
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