第20話

 二人と別れた後は、理由なくついてくるこいつとも別行動をさせてもらう。

「それじゃあ、俺は二階のランドリーで、濡れた上着を洗濯してくる。だからお前も、自由にしていてくれ」

「え? それだけで洗濯するのか? 勿体なくね?」

「余計なお世話だ。じゃあな」

「そうか。んじゃ、俺も暇だしついて行くわ」

「……」

 俺の返答を待たずして、階段を上り始める姿を見せられれば、もう何を言っても無駄だと諦めさせられた。

 それにしても、こいつはこれからずっとついてくるつもりなんだろうか。余計なことで悩まさないで欲しいものだ。

 結局、千石の後を追う形で二階のランドリーに向かうと、ここも食堂と同様で広々とした空間に、豊富な設備が備えられていた。

 そして、こちらも食堂と同様に、使用状況が一目でわかる大型モニターが設置されている。このモニターには、使用箇所だけでなく使用者のIDもわかるため、その場からしばらく離れていても、戻って来たとき迷うことはなさそうだ。

 設備に関しては、洗濯機と乾燥機は、背中合わせで四列並んでいる。コインランドリーとしては大規模だが、食堂と違ってこちらは作業に時間を要する上、設備が洗濯機と乾燥機に二分しているため時間帯によっては、混雑の可能性もありそうだ。

 今はさすがに誰もいないが、今後利用するときは空いていそうな深夜に来るとしよう。

 そんな今後の生活面にも配慮したスケジューリングをこなしていると、暇そうにしている男から質問が飛ばされた。

「なぁ、要。なんで、あいつ等にあんな話をしたんだ?」

「……なんでとは、どういう意味だ?」

「だって、あんなこと言えば、次に何を言われるかなんてわかりきってただろ。俺なんて、そのまんま過ぎて笑っちまった」

「確かに笑っていたな。そして、怒られていた」

「別に、怒られてねぇよ……。いや、怒られたけど、それは関係ないだろ」

 千石をからかいつつ、選択開始のボタンを押し終えてから、続きを話す。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る