第7話

「まずは、ここに至るまでの長期に渡る苦労を労わせていただこう。お疲れ様。そして、やはり今、必要なのは現状の説明だろう。恐らくここにいる全ての人間が、理解できていないだろうから、簡単に説明させてもらうとしよう」

 淡々とそう言い放つ男の言う通り、自分の身に何が起ころうとしているのかまったく理解できない。それは間違いなく、ここにいる人間の共通認識だっただろう。

「本来君達は、即座に処分されるべき存在だが、我々としても不利益を被る選択は極力控えたい。もしここにいる人間……いや生徒達が、一度は救い様のないクズだと断定されていたとしても、そこに優秀な者が存在しないとは限らない。つまり何が言いたいかというと、この有罪学園での一年間で、とある条件を満たし単位を獲得した生徒がいれば、その成果をもって免罪符とし、卒業という形で自由の身としようじゃないかということだ」

 その発言を理解するのに、数秒掛かってしまった。

 しかし、理解が成されれば、一瞬にしてその場は歓喜の渦に包まれた。当然、俺も例外ではなく、その発言には活路を見出し、自然と拳を握り込んでいた。

「静かにしたまえ、私の話はまだ終わってはいない」

 その一言で静寂を取り戻した体育館に、再び男の声が響き渡る。

「その単位獲得に必要な条件を満たすために、これから君達に行ってもらうのは――」

 単位獲得の条件……。優秀さを示すなら、やはり勉学か? いや、今の時代ならスポーツという可能性もあるか。とはいえ、それがなんだったとしても確実に卒業してみせる。

「厳正なるルールの下行われる殺人とその対処だ」


 え……?


 俺には一瞬、あの男が何を言ったのか理解できなかった。いや、厳密に言えば、理解はできたが信じたくなかったと表現するべきなのかもしれない。

 理解し難い現状に無理矢理向き合わされ、放心状態の俺達を置き去りにしたまま、男の説明は続けられた。

「この説明が終わり次第、君達の手枷は解除される。そうしたら、手枷の中に格納された電子端末によって、自身のクラスを確認してくれたまえ。それぞれ、『殺人側』と『探偵側』にクラス分けされているはずだ。この後、それぞれのクラスでも、ある程度の説明はされるだろうが、単位獲得などに関する詳細な条件は、電子端末でも確認できるから、各々で確認しておくことをオススメする」

 一方的に続けられる説明に、一人の男子生徒が声を上げた。

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