第8話
「ま、待ってください! 僕達は警察の指示でここまで連れてこられました。ということは、この施設が警察の管理下であることは間違いないと思われます。あなたは、その施設で人を殺めろと言っているのですか?」
彼の質問は至極真っ当なもののはずだが、それに対する答えは驚くほど淡々としていた。
「理解が進んでいるようで安心した。その通りだ。しかしながら、当然この場で殺人を犯した者が殺人罪に問われることはない」
「……このような非人道的な行いに、国の許可が出ているということなのですか?」
「そうだが、それがどうした?」
男子生徒の勇気ある抵抗も虚しく終わり、俺達に残されたのは、これから起こる絶望的な状況だけだった。
「現状の理解はしてもらえたようなので、私からの説明は以上とする。では、有罪学園での一年が有意義なものとなることを願っている」
そう言い終えると、映し出されていた男は消え、暗転が解除された。同時に、溢れんばかりのざわめきが周囲を賑わすと、続いて聞こえてきた、手錠の解除音と、床へ落ちる衝撃音が次の行動を示した。
腕が久し振りの自由を感じていられるのも束の間、落ちた手枷からは携帯電話のような電子端末が覗いていた。俺達の運命を導く、あまりにも大き過ぎる二択。俺が願うのは、当然探偵側のクラスだ。
……しかし、俺の運命は意図も簡単に絶望への舵を切ることとなった。
『柊要 殺人側 Aクラス 出席番号十七』
電子端末に表示されたその文字は、間違いなくこの学校においての俺のクラスを示している。
周囲の反応も確認してみるが、探偵側となった安堵の声と、殺人側となった悲痛な声で見事に二分していた。
よく見てみると、電子端末のカラーバリエーションで白が探偵側、黒が殺人側という、祈りながら確認する者を小馬鹿にした仕様にも、俺達の扱いが垣間見え、苛立ちを覚えた。
とはいえ、まだ希望が絶たれた訳ではない。あの男は単位獲得を目的とした例の行為が、厳正なルールに則って行われると説明していた。もしかしたらそのルールに、まだ諦めない理由を見出せるかもしれない。
俺は簡単な操作で、単位の獲得条件を電子端末に表示させた。
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