第3話 お泊まりは三人で

「あ、あのー……めいさん? 何をしていらっしゃるの?」

「え? お姉ちゃんはこういうのがお好きだと聞いたのですが……」


 夕食を終え、お風呂は各自で入りそろそろ寝ようかというタイミングになった。

 改めてめいを見ると、すごくスタイルがいい。

 特に胸の強調がすごい。


 私より背が10cmぐらい低く、手足も細いのに、どこがとは言わないが大きく実っている。

 しかも、お互い向かい合って抱き合っているので、それがより近くにあって眼福……非常に困る。


「あのー……めいさん?」

「はい」

「いつまでこのままなのでしょうか……」

「……さあ?」

「…………」


 めいは別に何も悪くないし、悪気もないし、私に喜んでもらいたいと思ってこうしてくれてるのだが……正直目のやり場に困る。

 さっきから目が離せないというか、思わずガン見してしまう。

 しかも、めいは慣れた様子で平気で私に抱き着いている。


「お姉ちゃん」

「は、はい?」

「……胸ばっかり見てるの、バレてますよ」


 しっかりバレてた。


「いや、これは……その……ごめんなさい……」

「いえいえ。お姉ちゃんなら、いくらでも見ていいですよ?」


 そう言って、めいは自慢気に胸を強調する。

 いくら女の子同士とはいえ、これはさすがに恥ずかしい。


「いや……まあ……それは……」

「それとも、揉みますか?」

「……へ?」


 めいはそう言うと、私の右手を掴んで自分の胸に押し付けた。


「ちょ! めい!?」

「どうぞ」

「いや、さすがにそれは……」

「遠慮なさらずに」


 いや、遠慮ではなく恥ずかしがってるのだが……

 めいは、ぐいぐいと私の右手を引いて、自分の胸を揉ませようとする。


「お・ね・え・ちゃ・ん」


 めいが耳元で囁いてくる。

 これはヤバい。

 私はこの獣から逃れることはできないのか。


「……あのさぁ、三人で一緒に寝ようって言ってたのに何してるの……」


 そんな時、うみが気まずそうに部屋の中に入ってきた。

 助かったとほっとするのと同時に、自分の中の大切な何かが失われたような気がした。


「いや……これは……その……」

「いえ、わたしはただお姉ちゃんとスキンシップをしていただけです」


 めいがいつもと変わらない笑顔で答える。


「……はい?」


 それを聞いたうみは、これがスキンシップでいいのかと言いたげな顔をしながらも部屋に入ってきた。

 ドン引きしている。まあ当然だろうけど。


「スキンシップ……結構激しめなんですね」

「あ、うみちゃんもしかして寂しかったですか? 三人でします?」

「いや、結構です」


 うみがバッサリ断る。

 出会って間もないはずなのに、めいの扱いを完全にわかっているのがすごい。

 私もそんな感じで断ればいいのか。

 ……いや、できる気がしないな。


「そ、そうですか……じゃあみんなで寝ますか……」


 めいは見るからに落ち込んで、めそめそとわざとらしい涙を見せている。

 男の人ならイチコロだろうけど、あいにくここには女の子しかいない。

 泣き落としは効かない。特にうみには。


「ですね。さっさと寝ましょう」

「うみはブレないなぁ……」


 うみはめいをガン無視して、私の手を引いて布団に入る。


「お姉ちゃん!」


 めいが続いて入ってくる。

 もう考えるのも面倒くさくなってきたので、ぎゅうぎゅうになりながら頭を空っぽにして寝ることにした。

 なぜか真ん中にされたことで二人の体温を感じ、温かさが体全体を覆う。


 ……ほんとになんなんだろう、この状況。

 こんな妹二人にサンドイッチされることあるんだ。一人は赤の他人だが。


「えへへ……お姉ちゃん、温かいですね」

「……そうだね」


 まだ混乱してるけど、その笑顔を見ていたらなんだかどうでもよくなってきた。

 明日にはきっといなくなっているだろうし、今日くらいはいいか。


『ごめん、もう好きじゃなくなった』

「……っ!」


 どうして今更になって思い出すんだろう。

 あんな嫌な記憶忘れかけていたのに。


「お姉ちゃん……?」


 めいが心配そうに顔を覗き込んでくる。


「……大丈夫だよ。ただ、ちょっと考え事してただけ」


 私は平静を装ったつもりだったが、動揺を隠しきれなかったみたいだ。


「お姉ちゃん、何かありましたか? よかったらわたしがお話を聞きますが」


 こんなつらい記憶なんて消えてなくなればいいと思っているから、あんまり掘り起こされたくない。

 話しているうちにどんどん別の嫌なことも思い出しそうだったので、適当にはぐらかすことにした。


「いや、別に何も……」

「そうですか? それならいいんですが……」


 めいは納得してなさそうな顔をしながらもそれ以上追及してこなかった。


「あ、そういえばめいって何歳なの?」

「……え?」


 話題を変えようとしてずっと聞きたかったことを聞いてみることにした。

 だけど、この質問はさすがに失礼だったか。

 めいはきょとんとした顔をして固まった。


「あ! いや、別に深い意味はないよ? ただちょっと気になっただけで、ね? 私のことお姉ちゃんって呼んでるし……」

「ああ、そういうことですか。大丈夫ですよ」


 めいはにっこり笑うと、待ってましたと言わんばかりに話し始める。


「わたしは今18です!」

「えっ」


 18ということは高校生?

 もしかして私犯罪者!?

 家出少女とかじゃないよな……不安になってくる。


「あ、18と言っても大学生ですので! お姉ちゃんと一緒です!」

「そ、そう……え?」


 なんで私が大学生なこと知ってるんだ。

 名前も知られていたし、もしかして同じ大学に通っているとかだろうか。

 だけど、私は大学でソロ活動しているのでこんな可愛い子と話した記憶がない。

 いったいこの子は何者なんだろう。

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