私の手は大きい

私の手は大きい


ピアノを弾くには向いている。

音はよく届くし、鍵盤も掴みやすい。

でも、乙女としてはどうだろう。


高校の頃、憧れている先輩がいた。

その人に言われた。


「手が大きいですね。もしかしたら、僕より大きいんじゃないですか?」


咄嗟に口から出たのは、

「ええ、平手打ちする時に便利なんです」

しかも、満面の笑顔付きで。


なお、平手打ちの効果については、実際に試したことがないため立証されていない。


あとから考えれば、

もう少し可愛げのある返しもあったのかもしれない。


でも、その程度で失われる可愛さなら、最初からいらない。


それから私は、

ピアノもキーボードも、

この手で弾き、打ち続けてきた。


手は、案外正直だ。

媚びるより先に、動いてしまう。


私の手は大きい。

今日もまた、余計なものを弾き落としている。


手は、覚えている。

鍵盤の感触も、キーの重さも、

言わなくてよかった言葉も、

言ってしまった言葉も。

だから今日も、この手は迷わない。


この手で、私はこれからも弾き、打ち、書いていく。

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