手のひらで温める朝

箱の中はまだ薄暗く、

蓋を開けた瞬間、ひんやりした空気が流れ込む。

夜と朝の境目が、そっとほどけていく。

それと同時に、

「ピィ、ピィ」と小さな声が重なっていく。


朝が来たことを、

雛たちは声で教えてくれる。


手のひらに乗せると、

思っていたよりもずっと体温が伝わってくる。

逃げ場のない温もりが、こちらの指先まで広がる。


小さな命は、

自分の体温だけではまだ足りなくて、

人の手を借りて温まっている。


熱湯でふやかしておいた餌を、

雛が食べられる温度まで、静かに冷ます。


本人が「いらない」と顔を背けるまで、

スポイトで、少しずつ餌を食べさせる。


雛の食欲は旺盛で、

温めた餌を飲み込むたびに、

粟や稗が透けて見えるほど、

そのうが膨れ上がる。


破裂してしまわないかと心配になるほど、

小さな体には不釣り合いなほど、パンパンに膨れ上がる。


こうして育てられた雛は、

成長してからも、

握るように持つと、

安心してお腹を、手のひらにあずける。


雛の頃の温もりを、

身体が覚えているのだ。


賑やかで温かい朝で、

一日が始まる。

この時間があるから、今日も迷わず動ける。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る