エピローグ


 #健診に行こうプロジェクト

 テーマ曲『3分の祈り(Three Minutes Prayer)』

 曲:ミッドナイトウォーカーズ with YO-UMA


 朝の通勤ラッシュ。

 ホームのスピーカーから、ゆっくりとあの曲が流れていた。

 ——「健診に行こうよ、未来のために……」


 足を止めた人が、ほんの少しだけ笑う。

 イヤホンを外したサラリーマン、ベビーカーを押す母親、ポスターの前で立ち止まる学生。


 そのポスターの下には、白い文字が小さく書かれていた。


『#心配されてるうちに — 監修:柿沼佳代(元人事課長)』


 風が吹き抜け、ポスターの端が揺れた。

 街のノイズに混じって、ギターのアルペジオが微かに聞こえた。


 昼下がりのカフェ。

 俺はノートPCを閉じ、マグカップを手に取る。

 向かいには、ミッドナイトウォーカーズのメンバーたち。

 ラップじゃなく、静かな会話をしている。


「再生数、すごいことになってるな。」


「でも、一番嬉しいのは『健診行った』ってコメントだよな。」


「うん、それが課長の『仕事の成果』だな。」


「ところで、柿沼佳代(元人事課長)って誰だよ。」


 俺はただ笑った。


「いたんだよ、健診に行けって『言ってもらえなかった』人事課長が。

 人にはさんざん言っておいてな。」


「なんだよ、それ。」


 課長、見てますか。

 こっちの現場は、今日も俺、働いています。


 外では、通りのスピーカーから『3分の祈り(Three Minutes Prayer)』のイントロが流れ出す。

 リナの声が、風に乗って響く。


♪  パパの笑顔を ずっと見ていたい

   3分の祈りを 今日に込めて——


 悠真が立ち上がり、窓の外を見上げる。

 光の中で、スカーフがふわりと舞い上がった。

 それはやがて空へ抜け、雲の切れ間から柔らかい陽が射した。


 しばらくの静寂の後、祈りは、風になった。


 ──おわり──


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YO-UMA/悠真 ―あなたに伝えたいことを届けるまで― 竹笛パンダ @Masaki14

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