【10月26日配信】 闇写カメラ検証 後編

「あー……っと……?これは…なかなか……?」


 編集も二度目となるとテンポよく進み、ものの数分で黒が剥がれる。画面の中心には、確かに“曰く付き”が並ぶ棚が写っている。

 問題は、右端だった。


 人のようなシルエットが見切れている。


「これ…人みたいにみえるな!」

 拡大と縮小を繰り返して影を観察する。

 表情や目線は分からないが、まるでこちらに挨拶するように、軽く手を上げているにも見える。

「それにしても、アピールすごいな!」

 井出はわざとらしく大きく笑う。

 二人は棚の前に行き、写真を撮った時と同じように立つ。自分達の影は棚の横には落ちず、当然、黒い人影など無い。


「……部屋に入られた?」


 ベランダの足跡、棚の横に立つ影。田口は思わず呟いた。

「いやいやいやいや!怖いこと言うなぁ!こういうのはね!やっぱ初期化ですよ!初期化!そういえば試してなかったよな!」

 井出は大袈裟に笑いながら『闇写カメラ』を操作し、『設定を出荷状態に戻しますか?』にYESと答える。

 画面が数秒間暗転し、日付設定画面に切り替わる。

 設定を終えて、試し撮りの為に室内にカメラを向けたが、手を下ろすと窓に向き直った。

「いや、試し撮りは風景だな。風景!……別にビビってるわけじゃないぞ?」

 笑いながら窓から外に向けてシャッターを切る。

 やはり、一分もすると液晶モニターは黒に染まった。

 

「……はい!これはもう“カメラ側のバグ”ってことで!

 初期化しても変わらないし、原因もわからないし、もう封印!」

 井出は勢いでまとめ始めた。

「というわけで!闇写カメラ編は今回で終了!また次回!」

 田口は渋い顔をしながらも小さく息を吐いて撮影を止めた。


「で、結局この影なんなんだ…」

 編集作業を進めながら田口は呟く。心なしかキッチンから聞こえてくる調理の音もいつものような勢いがない。

 

 何度見直しても影が写った場所には原因となるものは何もない。

 その上、以前と同じように『闇写カメラ』の液晶モニターが真っ黒になる瞬間、動画の音が途切れている。

 ベランダの足跡、棚の横の人影。先ほど思わず口にしてしまった言葉が本当のことなような気がしてしまい、思わず棚に目を向けてしまう。


「作業どんな感じだ?キリが良ければ飯にするか!」

 井出のわざと明るく振る舞っているような声で我に帰ると、編集作業を終えることにした。


「次のネタは視聴者様提供の単語帳だ!まだ届いてないけど!」

 牛丼を食べ終えると井出が口を開いた。あんな怪奇現象に見舞われながらも、動画を続けようとするメンタルは正直見習いたい。

 視聴者提供と聞いて、水の音が混ざるテープを思い出す。あれも同じように視聴者が送ってきたはずだ。

「あ、テープの人とはまた違う人だぞ!」

 井出がこちらの心を読んだかのように補足した。

 

「まあ、現物が届いたら改めて打ち合わせの日決めようぜ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る