悲しい炎
「誰か!誰かいませんか?!」
ホテルで火事が起こっている。
炎の中、私は館内を走っていた。
逃げ遅れた人を探している。
そして、必死になって誰かを探している。
「ルナ!大丈夫か?!」
あの白い服を着た人が、向かいから私のところへ走ってきた。
「〇〇!どうしよう、お客さんが全員避難できたか分からない、
お父さんもどこにもいないの。」
炎に包まれるホテルの廊下で青年と私は2人取り残されている。
「ひと通り探したけど、客はいなそうだった。残念だけどオーナーは見つからない。」
「そんな、どうして...。」
「ルナ、このままここにいるのは危険だ。俺たちも逃げよう。」
「いたぞ!捕まえろー!!」
声の先へ振り向くと、黒い制服のような格好をした組織が私たちの方へと走ってくる。
「マジか、見つかった...っ。逃げよう」
そう言って私の手をとり、一緒に廊下を駆け抜ける。
階段を降り、廊下や大広間を抜けてひたすら逃げた。
ロビーまで来ると、出口が見えた。
後少しでホテルから出られる。
そう思った。
「開かない、施錠されてる...。」
付近にいくつかある扉も開かない。
何度ドアノブを捻って開けようとしても無理だった。
「違う出口から逃げよう!そこはお父さんと私しか知らない場所だから、気づかれてないかもしれない。」
そう言って、その扉の前まで案内しようと前を進んだ時だった。
「危ない!ルナ!」
刹那、体が前のめりになって宙を浮いた。
その人が私を突き飛ばした。
大きな音、飛び散るガラスの破片。
天井からシャンデリアが落下した。
「う...ぁ...いった..。」
「〇〇!しっかりして!」
その人は私を庇って、落下したシャンデリアの下敷きになった。
「あは..は。ごめん、俺ここまでかも。」
「そんなことない!待ってて、今すぐ助けるから!」
壊れたシャンデリアを彼の上から退かす。彼の白い肌はガラスの破片で痛々しく傷ついていた。
「ルナ、お願い...。俺のことは..諦めて...。間に合わない...。」
「「いたぞ!」」
声が聞こえて、さっきの組織が視界私たちを見つけると、追いかけてくる
「ルナ、逃げろ...!」
「絶対いや!そんなことできないわ、2人で一緒に逃げるの!」
その瞬間光で目の前が眩しく反射した。
その人から私が遠ざかっていく。
扉の方へと私だけが向かう。
最後の力で私を助けるようだった。
「やだ、そんなのだめ、やめて!〇〇!」
「ルナ、またね、ばいばい」
「〇〇!!!」
「「捕まえろ!!」」
炎と組織の声に包まれた世界は、扉により閉鎖された。
一体彼はどうなったのだろう。
扉の向こうで何が起きているのか分からない。
先程の出来事が嘘のように静かな夜。
背後から聞こえてくる海の音がひどく怖かった。
どうしてこんなことになったのだろう。
このホテルで何があったのだろう。
ただ、あの後、ひどく悲しいことが起こった気がする。
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