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イナ・イエヴレワは手紙を持って郵便局に向かった。
街の石畳は冷たい風で濡れていて、手が少し冷たくなった。
胸の奥に小さな期待を抱きつつ、郵便局が見えた、その瞬間、街全体に鋭い警報の音が響いた。
耳をつんざく警音。警光の赤い光アラートランプの明滅。人々は慌てて走り出す。街の空気が震えた。
鋭く、耳をつんざくようなサイレンが断続的に鳴り響き、赤い非常灯が街の角々で点滅する。
「敵大陸間弾道ミサイル発射の可能性! 全市民はシェルターに避難してください!繰り返します、全市民はシェルターに避難してください!」
官庁や街角に設置されたスピーカーから、冷たい自動音声が反響する。
金属的な声が、街全体を支配するように鳴り渡る。
人々は慌てて、非常階段や地下シェルターへの避難口に駆け出す。
「早く! 地下に! 指示に従え!」
制服の軍人が声を張り上げ、人々を誘導する。
イナは心臓が跳ねるのを感じた。
「シェルター! シェルターに行くんだ!」人々の声が響く。
イナ・イエヴレワは震えた。
敵の核ミサイル。
心臓が跳ね、息が止まりそうになる。
でも、手紙を握りしめた手だけは、しっかりと硬く閉じていたかった。
手に握る手紙が重く感じられ、まぶたが一瞬震える。
街の人々の悲鳴、走る足音、鉄扉が閉まる音――あらゆる音が一度に押し寄せ、世界が揺れるようだった。
「イナちゃん! 走って!」
イナエ・ボロダコワの声が頭の中から響く。
郵便局の脇の地下避難通路に飛び込んだ。
薄暗い階段を駆け下りると、壁に取り付けられたランプが弱く光り、深い地下に伸びる通路を照らす。
「地下シェルターまであと少し!」
軍人の声が導く。息が荒く、冷たい空気が肺を刺す。
イナ・イエヴレワは手紙をぎゅっと握りしめて走り続けた。
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