第3話 全然定番じゃない

「ギィ、ギィ、ギィ」


 椅子の前脚浮かして、遊んでみたりしてー。う~ん、背伸び、背伸びー。


「!? って、もぉー! 師匠、ビックリさせないでくださいよぉー!」


「どれ、どれー」


「師匠、直せるんですか!?」


 えっ!? 手のひら? あたしの手のひら掴んでなに!?


「ここから魔力を出してはダメじゃ。指先から放出するイメージでやってごらんなさい」


「はい……」


「余計なことは考えずに、イメージだけでじゃぞ」


 余計なことは考えずに……ダメだ……上手くいかない……。


「余計なことは考えずにじゃ」


 余計なことは考え……。


「キラーーン」


「やったぁーー! 元通りに直ったぁーー!」


「ほぉー。ようやったのぉ」


「はい、師匠。やりました!」


「ほぇ。なんじゃと?」


「もぉー!? なんで師匠、最初のただのおじいちゃんに戻ってるのよー!?」


「う~ん。やっぱ修行は必要かぁー。最初はチート能力があって簡単に出来るって思ったんだけどなぁー」


 でも、あのバケモノを倒したときの魔法ってなんだったんだろ? あれは咄嗟で自然に出たんだよねー。


 ダメだ。考えてもわかんないや。外を散歩でもしてこよー。


「師匠、ちょっと外に行ってきますね!」



「キャーー!」


「うわぁーー!」


「助けてーー!」


 なにこの悲鳴!? いきなり!?


 バケモノ!? でも最初に見たのと違う! そんな大きくない!

なんか狼男みたい!


 えーっ、えーーっ、えーーーっ! こっちに来るーーーーっ!?


 な、なんか武器ーーー!


 って、目の前に剣を持った男の人背中ーー! 助かったーー!?


「待たせたねー!」


 きゃーー! カッコい……「ザンッ!」って、一撃でやられちゃったよー!?


 しかも、顔全然カッコよくないしーー!


「ぶ、武器!」


 こ、この太い木の棒!


「エイッ!」


 やったよー! 思いっきりフルスイングした木の棒が当たったよー! それで気絶してくれたみたい!  


 あれーっ、アレあれー!? 狼男が人間にー!? 人間になっちゃったよーー!?


 それにこんな昼間なのに狼男なんて、あり得ないよねー!?


 あっ、村の人たち、こっちに集まってきた!


 さっきやられちゃった人も、どうやら無事みたい。


「良かった。 こやつは村の者じゃない……。この腕の入れ墨からみておそらくは山賊だろう」


 なんのことを言ってるのこの人!?


「あの、どういうことですか?」


「ああ……。この村の外に出掛けていった村の者の何人かが、あのような別の姿に変えらて自分で自分がわからなくなってる」


「!?」


 それだとあたしが最初に倒したあのバケモノは、元々はにんげんだったってことー!?


 それでマーニャさんは、きのうあんな怯えた顔してて……。えっ!? まさか!?


「あのーーっ、さっきみたいなのは全部……元人間なんですか?」


「あ、いや……。そうではないが、ただ見分けることはできない」


「なら……」


「いや……。こうして人の姿に戻ったのも初めてのことなので」


「そーですかぁー……」


この世界はまだまだわからないことだらけ……。それに定番のカッコイイ王子様が現れてくれたと思ったら、全然ブサイクだったしー!


 どーなってるのよーー!?





  






  

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