第3話 全然定番じゃない
「ギィ、ギィ、ギィ」
椅子の前脚浮かして、遊んでみたりしてー。う~ん、背伸び、背伸びー。
「!? って、もぉー! 師匠、ビックリさせないでくださいよぉー!」
「どれ、どれー」
「師匠、直せるんですか!?」
えっ!? 手のひら? あたしの手のひら掴んでなに!?
「ここから魔力を出してはダメじゃ。指先から放出するイメージでやってごらんなさい」
「はい……」
「余計なことは考えずに、イメージだけでじゃぞ」
余計なことは考えずに……ダメだ……上手くいかない……。
「余計なことは考えずにじゃ」
余計なことは考え……。
「キラーーン」
「やったぁーー! 元通りに直ったぁーー!」
「ほぉー。ようやったのぉ」
「はい、師匠。やりました!」
「ほぇ。なんじゃと?」
「もぉー!? なんで師匠、最初のただのおじいちゃんに戻ってるのよー!?」
「う~ん。やっぱ修行は必要かぁー。最初はチート能力があって簡単に出来るって思ったんだけどなぁー」
でも、あのバケモノを倒したときの魔法ってなんだったんだろ? あれは咄嗟で自然に出たんだよねー。
ダメだ。考えてもわかんないや。外を散歩でもしてこよー。
「師匠、ちょっと外に行ってきますね!」
♢
「キャーー!」
「うわぁーー!」
「助けてーー!」
なにこの悲鳴!? いきなり!?
バケモノ!? でも最初に見たのと違う! そんな大きくない!
なんか狼男みたい!
えーっ、えーーっ、えーーーっ! こっちに来るーーーーっ!?
な、なんか武器ーーー!
って、目の前に剣を持った男の人背中ーー! 助かったーー!?
「待たせたねー!」
きゃーー! カッコい……「ザンッ!」って、一撃でやられちゃったよー!?
しかも、顔全然カッコよくないしーー!
「ぶ、武器!」
こ、この太い木の棒!
「エイッ!」
やったよー! 思いっきりフルスイングした木の棒が当たったよー! それで気絶してくれたみたい!
あれーっ、アレあれー!? 狼男が人間にー!? 人間になっちゃったよーー!?
それにこんな昼間なのに狼男なんて、あり得ないよねー!?
あっ、村の人たち、こっちに集まってきた!
さっきやられちゃった人も、どうやら無事みたい。
「良かった。 こやつは村の者じゃない……。この腕の入れ墨からみておそらくは山賊だろう」
なんのことを言ってるのこの人!?
「あの、どういうことですか?」
「ああ……。この村の外に出掛けていった村の者の何人かが、あのような別の姿に変えらて自分で自分がわからなくなってる」
「!?」
それだとあたしが最初に倒したあのバケモノは、元々はにんげんだったってことー!?
それでマーニャさんは、きのうあんな怯えた顔してて……。えっ!? まさか!?
「あのーーっ、さっきみたいなのは全部……元人間なんですか?」
「あ、いや……。そうではないが、ただ見分けることはできない」
「なら……」
「いや……。こうして人の姿に戻ったのも初めてのことなので」
「そーですかぁー……」
この世界はまだまだわからないことだらけ……。それに定番のカッコイイ王子様が現れてくれたと思ったら、全然ブサイクだったしー!
どーなってるのよーー!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます