最速で500層を攻略したのに終われないんだが? ~ログアウト不能の世界で女神と501回やり直す~

速水すい

1章繰り返される世界

第1話 ラスボス倒したらクソゲー始まった

5××回目…――日。

天王宮玉座の間にて"グリードブライアント"



討伐完了っと画面に表示された。




長期戦と予想してた…

HPバーが20本ある化け物だった。



だが、ラスボス五分で倒せたのに―――



妙に違和感が駆けてる。




こんなあっさりなわけないだろう。




今回は特に…な。いや、もしかして…




嫌な予感はあるが、まぁいいとしよう。



ふむ、全500層で72時間…か。

まぁ、最速攻略したのに――




微かに呼び覚まされるような記憶…




"あの子"を助けられるはず…だよな?









いや…何度もあの子を救えなかった。



これだけ挑んでも結果は同じなのか?




…いや、違うか。

今回ばかりはきっと違うはず…多分。



俺が必死に頑張ったのに

素直に喜べない自分がいた。



俺以外の周りのみんなは…

浮かれて喜んでるな。



俺は手に持つ黒い剣を…

静かに背にある鞘に納めた。



この剣さ何故か手入れしても…

意味がない気がするんだよな。



にしても、何かがおかしい。



クリアウィンドが現れなかった。



…なんでクリアにならないんだ?






「勝ったと思ったかしら?」



――不意に声が飛んだ。



誰もいない玉座に、影だけ先にあった。



ゆっくりと姿が現れた一人少女。


古い和風の血で染まった衣類――

"何度も変色を重ねた"ぽいな。


特に濁った金色の眼と…

もふもふなしっぽが印象的だな。



「500番目、世界を終わらせたいか? 」



この異常事態に…

俺は…こんなに"慣れてる"んだ?



「何を…いってるの…?」



この状況、ルノーみたく焦るはずだろ。

なのに…なんで俺は怖くないんだ。



「…もういいつかれたのじゃ」



俺は女狐を眺めた…名前が無い。



「なんで名前…空白で埋めてるの?」



ルノーの違和感もわかる…。

女狐…名前が表示されていない。




「…お主たちは何度目じゃ?」




何をさっきから言ってるんだ…?

―――ズキッ。



「…質問の意味がわからないな」




俺はなぜか反射的に剣を手にしていた。

…女狐は少し悲しい顔をしていた。



「まだ、抗うのじゃな…」



少女はギュッと握り締めた。



「貴様らに引導をくれてやる!」



女狐の声で空気は張り詰めた。



「またこのセリフか…」





猫耳の黒いパーカー少女は――

女狐をじっと睨むように見ている。




仕草を観察してる…

見た感じ、襲って来る気配はない。



あの子を助けるために来たんだ…

ここにいるはずなんだ!!




「あの子はもうおらぬ」

「デタラメを言わないでよ?!」

「黙れ」



ルノーは吹き飛ばされた。

何をしたんだ…?!




「てめぇ…!」

「その目、ワシはその目を待っていた」

「は?!」

「大切な人を奪われた憎しみ。その怒りの矛先は――妾を強化する」




憎しみや怒りで…?!

ふざけんな! 感情で強化される!?




俺は静かに拳を握り締めた。




――全部あの子の力じゃねぇか!




「じゃが、見飽きたのう」

「見飽きた…?」

「ルノー」

「…まだ生きておったかの」

「見飽きてるほど、私達は戦ってないわ」

「わしが見飽きたって言っておる」

「くっ!!」

「よせ! ルノー!」

「うるさい! ここまで来て…なんもなくて死んでくださいなんて…私には無理よ!」



ルノーは地を走った

女狐は右手を鳴らした…。



足元から針が現れて突き刺した。

絶叫が俺の耳を貫いていた。



その時だった…

一瞬だけ"あの子の影"が見えた。



それよりも……



なんでログアウトしないんだ…?

ルノー、隙ならいくらでもあっただろ…。



俺は…転移結晶をオブジェクト化した。



天にかざしたが…反応しなかった。



ルノーは震えた声で俺にいった。



「氷華…ログアウトできないんだ…」

「…なにをいってるんだ?」

「私たち、現実に帰れないんだよ…?」



ルノーはゆっくりと床に座った。




現実に…帰れない…?

俺は不気味なぐらい落ち着いてる。




ルノーは隣で泣き崩れていた。



これさ、もうゲームじゃなねぇな…。



女狐の言葉が耳にやけに残るが…

世界が一瞬だけ止まったように感じた。




「500番よ、つまらない反応じゃな」

「――せよ」



でもよ、あの子がいない…

なら何のために来たんだ俺は…!



「む?」

「あの子を―――」


―――ビリビリッ



「なんじゃ?!」

「返せって言ってんだろうが!!」



俺が叫んだ瞬間…

稲妻が辺りに走り破壊した。



「―――ぐっ!?」



女狐は驚いていた…

こんな力あるわけがないみたいな顔だ。



「いや、そんなわけが…」



でも、俺は"あの子"を救うために来たんだ。




"私はこの世界からでれない"




この頭痛はその子を助けるためにあるんだ。




「…いねぇんだよな?」



「おらぬが…貴様はまだ抗つのか?」



動いてないはずなのに、

違う場所から女狐の姿が現れる…。



なんだ…これ…?



「ワシのは返してくれぬのにな…」



さっきまで女狐は笑っていたのに…

急に泣き堪えながら震えていた。





「何度も…何度も…奪い。返せ…わしの大切な…返せ…!」

「……」

「"もう一つの現実化"は次で成し遂げる」

「何を言ってるんだ?!」

「知りたければまた来るんじゃな」



意味ありげに口にした女狐は…

俺の前をゆっくりと歩く。



「次は"ワシの世界"で…… じゃな」

「そんな幻想…また砕いてやる」

「同じ展開にはもう飽きたのじゃ」

「お前はそうだろうな…」

「また貴様は忘れるじゃろうしな」




負けるのも分かるけど――

このまま負けを認めるのは嫌だな。



「次こそこのクソゲーを攻略してやる」

「万死に値するのう」



――空間が乱れ始めた。



死の直前、一瞬だけ時間の流れが止まった。

ある少女が一人泣いていた。



"また失敗しちゃった…ごめん"



――その声に俺は胸が締め付けられた。



初めて見るはずなのに…

どうしてか俺は――君の声だけは、忘れちゃいけない気がした。




―――次の俺が、きっと君を救う。



その子の名を口にした瞬間――

歪んだ空間はノイズを走らせ戻る。



俺は女狐に腹部を貫かれた。



…ラストフロアで俺はまた負けた。



ビリビリと電撃が画面を横切る――

空間に亀裂が入り砕け散った。




―――システムログ



NPC死亡者…不明。

メインクエストに影響…あり。



システムトラブル…不回避…。




外部からのアクセス集中…。



………


……




該当のデータが消去されました。


……



――再起動します。




"フェアリーナイトオンライン"






―――501回目の世界へようこそ―――

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