最速で500層を攻略したのに終われないんだが? ~ログアウト不能の世界で女神と501回やり直す~

速水すい

1章繰り返される世界

第0話 500回目の終盤

5××回目…――日。

天王宮玉座の間にて”グリードブライアント”



床は赤い絨毯に、教会のような窓ガラスが全方位にびっしりとある。



天高くに謎の絵が描かれており、ラスボスを討伐した勇者を象徴してるようだった。



ラスボスは淡い光を放ち―――弾け飛んだ。



「終わったな」

「そうだね、そうだといいな」

「…クリアじゃないと困るな」



玉座は金ピカに輝いていた……まるで王の帰りを待つようにそこにあった。



こんなのあったっけ……?



俺は少女ルノーに視線を飛ばした。



「こんなのはないわよ」

「やっぱりな、少し変化あるな」

「んで、結果は?」



ルノーは左右に首を振った。

それは周りの賑わう声と反する反応だった。



「ダメか、でもやることはやった」

「本当にいいの?」

「あぁ、今回は負けるつもりで来た」

「作戦通り、最前線プレイヤーは氷華の提案に乗ってくれたみたいだからね」



そこは少し喜ぶべきかもしれないな。



なんせ、500回も繰り返されてる世界だ

だから長い旅路を終わらせる必要はある

それに、俺はアイツを救いたい。



―――ただ、それだけなのに。




こう俺が悩んでても、レイド参加プレイヤー達が賑わってる連中が羨ましいぜ。



「それで氷華、また記憶が……?」

「それは仕方がない。きっと次も表情が一定だろうな」

「私、見てられないよ……」



俺はルノーの頭を撫でる。



「こうしなきゃ、たどり着かないから」

「うん……」

「頭さ、熱くない?」

「不意に撫でるから悪い!」

「風邪ひいたんじゃないのか?」

「そうじゃなくて! もう、氷華知らない!」



ルノー、何怒ってんだよ……?



レイドに参加した奴らは、次目覚める頃には記憶すらないだろうな。



悲しみに浸れる気持ちすらない俺が、それを言うのがおかしいけどな。



さて、今回は……全500層で72時間か。



最速攻略になるんだろうけど、3日で作戦を終わらせたゲーマーさん達に感謝だな。



そして、俺は素直に喜べない自分がいた。

こっからなんだよな、何もかもが始まる。



ルノーはウィンドウを開いて、異変がないかを調べ始めてる。



「いつまで武器を持ってるのよ?」

「あ、わりぃ」



俺はルノーに言われて、手に持つ黒い剣を静かに背にある鞘へ納めた。



「その剣がなければ、分からなかったよね」

「あぁ、これだけが手入れしても意味なかったもんな」



“パンパカパーン!! ゲームクリアおめでとう!!”



うぉ!? 今更、ゲームクリア演出出やがった!!



「時差がやっぱりあるわよね」

「…クリアして5分経過してるからな」



ようやく周りのプレイヤーも、違和感に気がつく。



一番耳にしたのは、“5分経過”して現れたクリアメッセージだった。



「あれ? クリア戦利品は?」

「なんでなんもないんだ?」

「街に転移しないのか?」



プレイヤーがザワザワと飛び交う声……。



この不穏な空気にルノーは頷いた。

……そろそろ奴が現れるか。



「勝ったと思ったかしら?」



そう、不意に声が飛ぶと……

誰もいない玉座に、影だけ先にあった。



ゆっくりと姿が現れた一人の少女。

玉座に肘を乗せて、女帝の様に片足を膝に乗せていた。



「何回目のご対面かしらね?」



古い和風の血で染まった衣類――

“何度も変色を重ねた”ような感じだな。



プレイヤー達は混乱していたが、一人ずつその姿が消えていった……。



なんだあれは、転移の類か……?



やがてこのフロアは静まり返る。



特に濁った金色の眼と……

もふもふなしっぽが印象的だな。



こいつだけは……あの挑発的な眼差しが気に食わないな。



「まずは情報だろうな。ゲーム攻略の基本だし、裏ボスでも”存在”してる。さぁ、見せてくれお前の―――“情報”を!!」



俺は解析スキルを使った。

裏ボスとしか書かれてなかったんだ。頼むぞ……!



“測定不能”



今まで見破れなかった敵はいなかった。



俺は息を飲んだ。この世界に存在しない敵が、今目の前に―――いることに。



気が付けば、解析スキルに赤い線が引かれていた。



システムログが赤い字で警告文を流している……。



――“異物”が検知されました――

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